3Dレイアウトシステムは「形骸化している工程」か? | CGアニメーターサバイバル

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まず、作画のレイアウトシステムというのは宮崎駿監督が「ハイジ」で取り入れてからというもの、アニメの制作工程を一変させてしまった歴史があります。


詳しくは以下。
http://bit.ly/yJST6j


このシステムは押井守監督のように、レイアウトが完成すれば、後は全て他人に任せてしまうくらい演出における絶対的なものとして、多くの「レイアウト至上主義者」を生み出しました。



その絶対的影響力は、このシステムに疑問を持とうとしない
「思考停止に陥った人達」をも生み出している事実があるというお話です。


上記のwikiリンクにも少し記述がありますが、近年、3DCGアニメになった今も当たり前のように工程に取り入れられています。




もちろんメリットもあるから取り入れられている訳ですが、
ここではあえて影の部分にスポットを当てたいと思います。



このシステムが、いかにCGアニメ制作に不幸をもたらしているのか。
監督すらも見えていない部分が、現場にはあります。



まず、レイアウトというのは、場面設計をするカメラマンの役割というのは良く知られていることですが、レイアウトマンになる為には、動画で1~3年、その上で原画を数年以上経験を積んだ人が選ばれます。




かたや、CGでは新人に、まず3Dレイアウトを覚えてもらいます。




・・・・・おかしいと思いませんか?
そう。本来は出来るわけがないのです。




これは、一方、仕方のない事なのですが、CGは吉か凶か、動画、原画、レイアウトのような分業での雇用はせずCGアニメーターとして雇用されるのが一般的です。




その制作体制の違いに違和感に感じている人はどれだけいるでしょう。




こういう点が、作画のシステムをCGアニメ制作に転用して、はみだしてしまう部分です。




じゃあ、仮に、分業の形で人を雇ったらどうなるでしょう?




現場的には理想的かもしれませんが、間違いなく経営が悪化して会社が傾きます。




そもそも、作業工程に関わる人数をCGを取り入れる事で、低減させている側面もある訳ですから、合わない形のパズルのピースを無理やり突っ込んでも、はまる訳がありません。




3Dレイアウトシステムで生じる問題はまだあります。



3Dレイアウトにどこまで求めるのか?ということです。



本来レイアウトシステムの意義は、キャラとBGのズレなどの問題を解消し
全体の質を高めるのを目的としています。



では、同じレベルのものをCGでやるとどうなるか?



キャラの全ポーズを決め込み、表情をつけ、BGのフレームも決め込むと、それなりに時間がかかります。その為、スケジュールに間に合わせるには、TVのCGアニメでは、”ある工程”を省くケースが多いです。




それはBGのモデリングです。




この作業を極端に減らしていき、箱のようなアタリオブジェクトを配置していくわけです。何度も登場するシーンはBGをモデリングしますが、屋外であったり、単発のカットはあまり作りません。



要するに、美術が必要な最低限の情報すら満たしているのか、あやしいラインですね。



・「木」という文字が書かれた、三角形のなぞのオブジェがあったり、ただの箱の家があったり。

まだそれでも、遠景ならいいでしょう。
キャラが居る、近景の山の斜面が寸分の狂いも無い直線だったりする時もあったりする訳です。


・キャラ以外のBGがパース線しかない真っ白カットも3Dレイアウトでしか在りえないカットでしょう。




そんなものが「3Dレイアウト」と呼ばれているのです。
こんなもの美術のガイドとしてもどうなんだろう?と本気で思うわけです。




CGアニメで見た事ありませんか?
高速道路で車をフォローしているのに、地面の凹凸が全く無い為、歪まないシーン。舗装されていない、自然の地平線なのに定規でかいたような地面。




これらは、3Dレイアウトが生み出した事故ではないかと容易に想像してしまいます。



まとめると

・3Dレイアウトが力を発揮するのは、出来るCGレイアウトマンが必須で、その分業ポジションをCG会社が再現するのが困難。

・3DレイアウトのBGのクオリティを上げていくのは非常に労力がかかりTVアニメにおいては、現実的ではない。



結果的にクオリティアップを図るどころか、場合によっては逆効果になり
CGアニメには向かないケースも存在するということになります。



今回は、TVアニメという制限が強い、限定したケースのお話ですが、妄信されている「3Dレイアウトシステム」というものが、時に害悪をもたらすということを
知ってほしいという事で記事にしました。



CGアニメには、現場を見て、工程を変化させていく。
そんな柔軟さがあってもいいと思うわけです。



一応、代案も考えましたが、また、そのうち。