K-BALLET TOKYO「ジゼル」2024年。
24日千秋楽のお目当ては、7年ぶりにKバレエのアルブレヒトを踊る山本雅也くん。
私が「海賊」で初めて雅也くんを観てファンになり、すぐに買ったチケットがその次の公演の「ジゼル」でした。
その時は雅也くんもまだ若く、ヒロインのジゼルは当時Kバレエスクールの校長先生だった荒井祐子さん。もちろん遠目から舞台上を見るとかわいい村の少女ジゼルと凛々しい貴族アルブレヒトに見えていたけど、実際の関係性を知っていると(ジゼルに指導されるアルブレヒト)大変だろうなーと思っていました。

それが今回は押しも押されもせぬプリンシパルになった雅也くんアルブレヒト。もうまとう雰囲気から違います。
16日の後、この24日を観て、とても演劇性の高い公演だと思いました。
ジュリアンくんの時は正直、ロイスと名乗って村人になりすましていたって…無理でしょ?隠しきれない別世界オーラ…と思っていたけれど、雅也くんアルブレヒトは村に溶け込み、そこに自分の居場所を見つけて幸せに過ごしていたのだろうなーと思いました。だから、ジゼルを失った自責の念も、全ての感情が伝わってきます。
ダンスには言葉がないとは言え、表情から自然に感情が読み取れるのは、日本人同士だからこそ伝わるものがあるのか?
バリエーションも、7年前に宮尾俊太郎さんから公開レッスンで指導を受けていたときの初々しさとは全く変わり、ミルタの命令で踊らされる身体の辛さ、ジゼルを裏切った心の痛み…演劇表現としてのダンスに見えました。

ジゼルは飯島望未ちゃん。最近、雅也くんとペアを組む機会が減っていた(「白鳥…」の時は代役として組んでいた)けれど、やはりこの2人はお似合い。
素朴な村娘の時から、どこか身体の弱さもわかる儚げな風情のジゼル。2幕はもう、長い首のうつむいたラインが完璧に妖精✨儚いのに芯は強いジゼルを体現して見せてくれました。

ヒラリオン杉野彗くんも、ピッタリ。ダンス自体は少なめだけれど、演劇的表現が見事で、粗野だけれど心優しく、この人と一緒になれば幸せになれたのにね🥲と観客に思わせる村の青年でした。

ミルタの成田紗弥ちゃんは、メイク怖すぎてビックリしたけれど、どこかジゼルへの母性を感じる。ジゼルを傷つけた男だから徹底的に滅ぼしてやる…というような力強さでした。

ミルタ以外のウィリたち=コールドバレエも本当〜に美しかったです。信じられないような高速パ・ド・ブレで音もなく移動し、アラベスクのままですれ違っていき、男に裏切られて命を失った若い女性たちの想いだけが浮かび上がるような神秘的情景に、バレエの究極の美はコールドだなぁとあらためて感じました。

あと舞台装置と衣装が表す世界観も素敵。
1幕のジゼルの衣装は一般にブルー系のイメージだけど、Kバレエのはブラウンで、背景も全ての登場人物もブラウン系のグラデーションで、セピア色の写真のような、ミレーの「落穂拾い」のような光景が広がっていて、さすが熊川さんのセンスだなーと見ていました。