新作ミュージカル「この世界の片隅に」に足を運びました。


有名な作品だけど原作未読、映画も見てなくて、ドラマは1話と最終回だけ見たのだったか(←なぜそうなった⁉︎)…基本、全く知識なしの観劇です。


オープニング 1曲目はまさしく主題歌って感じ?出演者全員が登場して作品テーマを歌い上げ、これはカーテンコール?と思ったくらい盛り上がりました。

そして…伝わってくるのはTipTap感…というか、「Play a Life」感?…名もなき人の人生の集まりが歴史…というような共通の主題が感じられ…そうだ、これも上田一豪さん演出だった。それで(伏線として)2月に「Play a Life」を上演したのかな?あの舞台のベースがあったことで、さらに「この世界…」の舞台も感動できたような気がしました。


音楽はアンジェラ・アキさん。

振り返れば…

劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」はメインテーマ「夢を続けて」を森進一さんに歌ってもらうことでミュージカルからヒット曲を出そうと狙っていたし、

音楽座は小室哲哉さんに「マドモアゼル・モーツァルト」を数曲作ってもらい、

ネルケプランニングは「コーヒープリンス1号店」のテーマ「恋する心たちのために」を槇原敬之さんに依頼し…

ヒットメイカーが全曲を作るオリジナルミュージカルを創作し、ミュージカルナンバーからヒット曲を出すことは日本ミュージカル界の悲願だったはず。やっと日本ミュージカルもここまで来たか…と思うと感慨深い。アンジェラ・アキさんが歌うアルバムも発売されているし↓、歌番組などでも歌ってヒットさせてほしいと願います。



舞台ストーリーの時系列は少し複雑。

昭和20年6月にヒロインのすず(昆夏美ちゃん)が2つの大切なものを失った後の場面から始まり、子ども時代に遡って北條周作(海宝直人くん)との出会い、結婚…と進んでいく(その中でそれぞれの人物の回想シーンも挟まれる)。私は原作知識なかったので何を失ったのか知らず(分かった時は衝撃でした😭)、その6月が近づくに連れてハラハラしながら、淡々と描かれる戦時下の日常を見つめていました。


海宝直人くん演じる北條周作は子どもの時に一度だけ会った相手の浦野すずを見つけ出し、嫁にもらう。夫婦でも敬語を使うような2人はもどかしいくらい穏やかな関係。歌も「醒めない夢」や「言葉にできない」などゆったりとした温かいナンバーが心に沁みます。原作未読なので、周作とリンの関係は今ひとつよくわからないのだけど、情熱的な想いはあったのか?2回目観劇までに原作を読む予定です。


小野塚勇人くん(←たぶんはじめまして)演じるすずの同級生・水原哲は、時系列を説明するMC的役割も担っていたけど中途半端だったかな?彼のソロナンバーあったか記憶ないのだけど、アンジェラ・アキさんだからか、女性の歌う曲の方が多く、印象に残っているので…💦


女性の歌の中でも一番、印象に残ったのは音月桂さん演じる周作の姉の歌ったソロ2曲。ジャズ風の曲で過去を振り返ったナンバーと、不幸の後でも力強く歌った「自由の色」が本当に良かった。たぶん音月さんが一番、アンジェラ・アキさんの曲のニュアンスを表現していたと思うけど、周作姉のキャラも好きだった(たぶんこの作品で一番ドラマチックな人生で、不幸だけれど下を向かず、潔い)し、これまで観たさまざまな音月さん出演舞台と比べても私的にベスト音月さんだと思います。


桜井玲香ちゃん演じるリンも魅力的。玲香ちゃんもミュージカル女優としてキャリアを重ね、安心して観ていられます。


そして主演・浦野すず役の昆ちゃんにはブラボー👏✨

つい、この間「トッツィー」で"未来が見える…"と歌っていたコメディエンヌと同じ人とは思えない。本当に可愛くて、いじらしくて、守ってあげたくなります。

そんなすずちゃんが、周作とリンの関係を知って歌う「端っこ」…"あの人を呼ぶこの人の口の端っこは微笑んでたのか?"という歌詞が嫉妬の表現として秀逸で、昆ちゃんの歌声も切なく、すずの中にもこんな感情があるのか?と驚かされます。玉音放送の後、最後の1人まで戦うんじゃなかったのか?という叫びは昆ちゃんの真骨頂。ずっとおとなしいすずだからこそ、感情が爆発するシーンが刺さりました。

そして、さらに感動してしまったカーテンコール。

最後に昆ちゃん1人が舞台に残った瞬間…あぁ、昆ちゃん主役なんだ…と実感しました。最初からヒロイン女優ではあったけど、主役の相手役とかダブル主演の1人とかで、大舞台の本当の0番に1人で立つ昆ちゃんを観たのは初めてかも?奇しくも同時期に昆ちゃんデビュー作の「ロミジュリ」上演中で、あのジュリエットからここまで頑張ったねー…と心から拍手を送りました。


↓帰りに地下で見つけた大きなポスター。

心に沁みる日本人のミュージカル…多くの人に観てもらえますように。