2020年7月31日。

 

本来ならば仕事は夏季休暇を迎え、僕はイタリア北部の平原を自転車で走り回っているはずだった。

恥ずかしながら、僕は新型コロナウイルスの感染拡大がこれほどまで深刻な事態になるとは想定していなかった。

 

3月ころに北部ロンバルディア州での感染が爆発的に拡大し、「こりゃあ、今年の夏はイタリア難しいかもな」と思い始めた。

そこで計画を変更し、今夏は比較的安全なドイツを自転車で旅しようと考え、早いうちに安かったトルコ航空の航空券を抑えた。

 

しかし、次第に世界中で外国人の入国拒否を発表するニュースが続々と報じられるようになり、暗雲が立ち込める。

自分が外国からウイルスを持ち込んで子どもたちに感染させるようなことだけは避けねばならないと判断。

職を失うような事態になったら旅もできなくなるわけで、泣く泣く今夏のヨーロッパ渡航を断念した。

断念した後に夏季休暇の日程短縮が発表されたので、どのみち外国に行くのは難しかったのだろう。

 

しかしながら、10日間の夏休みを何もせずに過ごすのももったいない。自転車に乗りたいし、体がなまってしまわないよう野宿もしておきたい。

何処か良い場所はないかとグーグルマップで探し、熟慮の末、今夏は北海道に行くことに決めた。

 

 

まだ走ったことのない稚内~札幌間の内陸をルートに設定。

8/7~8/16の10日間の日程。色々寄り道しても400~500㎞程度に収まるのでちょうどよかろう。

 

北海道を自転車で走るのはこれで4回目になる。

今乗っている愛車「一周号」で初めて旅をしたのが2010年。

GWに東京~銚子の旅でウォームアップし、満を持して夏休みを使って北海道を旅したのだ。

 

↓は10年前の写真。

 

 

旭川空港に降り立ち、美瑛やら札幌やらを経由して函館へ向かう旅だった。

 

 

 

 

 

美瑛の丘の景色に魅せられたり、自転車乗り向けの道ではないニセコパノラマラインに苦しんだりしながら2週間旅をした。

毎日が新発見の連続で、そりゃもう楽しいものだった。

 

あれから10年になるのだ。「一周号」にとっても10年の節目になる。

外国に行けずやむを得ず「妥協」して北海道に行くことを決めたが、だんだんと楽しみになってきた。

 

 

 

 

とはいえ、10年も乗っていれば老朽化は避けられない。

馴染みの自転車屋にも何度も「買い換えたほうが安い」と言われているが、日本中世界中駆け回ってきた身としてはどうしてもすんなり買い替える気持ちにはなれないわけで。

 

まずは昨年末のヴェトナム編でズタボロになったブレーキワイヤーを交換する。

ワイヤーだけでなく、ブレーキ自体が錆のために動きが悪くなってしまっていたので丸ごと交換した。

 

 

前輪のホイールも交換した。

少し前から軸がズレるような違和感があったのだ。

自転車屋いわく、軸受け(ベアリング)に砂粒が詰まって歪んできているとのこと。

ベアリングを分解&洗浄するのと値段に大差がなかったので思い切って交換した。

 

それからペダルの軸に相当するボトムブラケットという部分も交換した。

数年前からペダルを踏みこむたびにカチカチッという異音がしていた。

長らく原因不明だったが、どうもボトムブラケットの寿命らしい。

交換した後に古いボトムブラケットを見せてもらったが、錆と汚れのためにまともに機能していなかった。

 

もろもろの修理でかかったお値段は13000円ほど。

10年前に5万円ほどで購入したので、累積すると2台くらい新車が買える程度には修理代がかかっていることになる。

 

愛車のニックネーム「一周号」の「一周」とは、もともと「日本一周」を意図していた。

日本一周自体は2011年にとっくに達成し、なんやかんやでもう2万km近くを走っている。

次の目標は「地球一周」である。

地球一周に相当する4万kmを達成するまで、買い替えることなく修理を重ねながら乗っていきたいのだ。

 

4万km達成する頃には、僕はもう白髪の爺になっていることだろう。

何らかの形で不慮の死を遂げた時のために、読者の皆さんに「墓には一周号を一緒に埋葬してくれ」と遺言を残しておく。