7/30
出発の日がやってきた。
前日までの5日間は夏期講習でしゃべりっぱなし。
暑さであまり夜も眠れず体調に不安を感じていたが、当日を迎えるとすっかり元気になった。
9時には出発し、最寄りのバス停に向かって自転車を梱包する。
2022年の4月から市のコミュニティバスが小見川駅まで路線を通してくれた。
近年では輪行袋では飛行機に自転車を載せられない航空会社も増えてきて、写真の通り頑丈な段ボールに梱包しないといけない。
輪行袋なら最寄り駅まで自走してから収納できるが、箱となると抱えたまま駅まで6㎞ほど漕ぐわけにもいかない。
どうしたものかと悩んでいたところにコミュニティバスの存在を知ったのだ。
しかし、いざ乗り込んでみると「そんなに大きな荷物は載せられないよ、1メートル超えちゃってるからねぇ~」というありがたいお言葉を運転手から頂く。
そういう事態にならぬように市とバス会社のHPを隅から隅まで目を通したのだが、1メートルを超えた荷物は載せられないという規約はどこにもなかった。
下手に張り合って印象を悪くされて降ろされてしまったらどうしようもない。
こんな時は、必殺途方に暮れる作戦である。
バスの中央で立ち尽くして「エーット、アレェ、、ドウシヨウカナ」などとつぶやく。
見かねた運転手は「今回はしょうがない。携行品料金支払ってくれれば載せましょう」とおっしゃってくださった。
作戦大成功である。運賃と携行品料金合わせて小見川駅まで300円であった。
昨年、マレーシアに留学に行った卒業生を見送りに来て以来の空港である。
成田空港に着いたのは13時前で、17時のフライトまでまだまだ時間がある。
荷物を量ってもらったところなんと29.5㎏。
30㎏までは追加料金がかからないのでギリッギリだった。
もっと軽かったはずだと思っていたが、最後に海外自転車旅をしたのはキャンプ用具の要らないベトナムだった。
感覚がマヒしていたのだ。危ないところだった。
出国審査を済ませて向かった先は大韓航空のラウンジ。
ケチケチ成人の僕だが、実は数年前にクレジットカードのグレードをプレミアムまで引き上げた。
その特典で空港の高級ラウンジ入り放題のプライオリティパスを保有しているのだ。
いつも利用しているラウンジはドリンクと柿の種しか置いてないが、ここのラウンジはすごい。
カップ麺やおにぎりなど軽食も食べ放題である。
飲まないけども高級なお酒も飲み放題。
なんてことだ、地上の楽園は成田空港にもあったか。
軽食を食べまくって大満足。長時間フライトに備えて腹9.5分目くらいに抑えておいた。
「タダより旨いものはない」を僕の語録に加えたいと思う。
17時に成田を発ち、まずは乗り継ぎ先のアラブ首長国連邦のアブダビ空港へ向かう。
利用したのは同国国営のエティハド航空。
さっそく機内食が2回出た。
もったいない癖が炸裂し、たいして腹減ってないのに平らげた。
アブダビ空港には10時間かけて深夜に到着。実は中東は人生初上陸である。
時差があるので日本時間だと明け方くらいか。かなり眠い。
アブダビにもプライオリティパスで入れるラウンジがあったので乗り継ぎ便を待つ間にもちろん利用する。
ここもドリンクと軽食が食べ放題である。
この後アブダビから目的地のフランクフルトまでまだ6時間のフライトが待っている。
さすがに夜中に腹を壊す事態は避けたかったのでサラダだけ食べることにした。
はっきり言って不味かった。
トマトはなんか硬いし、レタスも渋みがある感じがする。ドレッシングも口に合わずで残してしまった。
生野菜なのに不味いことなんてあるというのか。日本の野菜がいかに美味いかを実感させられた。
深夜2時の便でアブダビからフランクフルトへ。
さすがに眠気が限界に達し、フライトのほとんどは眠っていた。早朝に提供された機内食はもちろん平らげた。
「タダより美味いものなし」である。
7/31
現地時間で朝7時過ぎにフランクフルト国際空港に到着。ヨーロッパのハブ空港だけあってヨーロッパ-アジアの発着便の多くがこの空港に離着陸する。僕も累積4回くらい利用している。
2年半ぶりとは言え手慣れたもので、それほど苦労なく荷物を受け取った。カートは本来1ユーロの利用料がかかるが、親切なラテン系のお姉さんが使い終わったものを僕に回してくれた。
鉄道を利用して空港からフランクフルト中央駅へ。
さすがにここまで来ると日本人の姿はほとんどなく、駅舎のビジュアルが旅情を掻き立てる。
だがしんどいのはこれからである。
フランクフルト中央駅から長距離バス乗り場に移動し、今旅の出発地であるベルリンまでバス移動するのだ。
長距離バス乗り場までは駅舎から500mほどだが、この行程が今旅で一番きつい。
箱に入った自転車と荷物計30kgほどを抱えて移動するのだ。
車輪を転がせれば楽だが、この後に箱ごとバスに載せるためそうもいかない。
ヒーヒー言いながら15分かけてバス乗り場へ移動した。
ところがここでまた問題が発生。
ドイツの交通機関はなかなか自転車乗りに優しく、自転車のまま鉄道に乗り込めたり、そのままバスに載せられたりする。
今回調べておいたフリックスバスは、事前に調べたところ自転車を載せられる車両ではないことが判明した。
バスを利用せずにフランクフルトーベルリンを自転車と共に移動する手段は飛行機と鉄道があるが、飛行機は200ユーロ近くかかってまあまあお高い。鉄道もダイヤの都合上バスと同じくらい時間がかかる上に100ユーロ近くかかる。それならバス一択でしょということで、何とかしてフリックスバスに自転車を積む方法を思案したのだ。
ホームページで予約したところ、超過手荷物料を支払えば大型の荷物も載せられることがわかった。自転車箱の三方の長さは規定以内だし、それならば空港で自転車を組み立てず、箱のままバスに載せてしまえばいいということである。
ひいひい言いながら500m箱を運んだのもそういう理由だったのだ。
ところがバス乗り場まで自転車を運んだところ、黄緑のポロシャツを着た係員が近づいてきて「この中身は自転車か?自転車は載せられないよ」とおっしゃるではないか。
そう来るだろうと思って箱のままにしてあるのだ。神栖のコミュニティバスとは異なり、ちゃんと超過手荷物分も支払い済みなので問題なかろうとゴネる。
係員は困った様子で「ここで箱から自転車を出して組み立てられるか?載せられるよう本部にかけあってみる」とのこと。
バスの出発時間まではまだまだ余裕があるし、ベルリンに着いてから組み立てる煩わしさを無くせるならばお安い御用である。
というわけで半日早く、愛車「ニュー一周号」がお目見えとなった。
ところがところが、またしても問題発生。
係員は組み立てるならばOKと言ってくれたが、バスの運転手が頑なに首を縦に振ってくれない。
トランクのキャパがどうたら、規則がどうたらと僕をねじ伏せて載せさせない気である。
こうなったらもう係員に戦ってもらうしかない。
先手を打って超過手荷物料金を払ったがダメと言われ、言われるがままに組み立てたのに運転手にダメと言われ。さすがに僕に落ち度はないはずである。
係員を呼んできて運転手に断られた旨を伝えると、いよいよ係員vs運転手の攻防戦が始まった。
ドイツ語なので何を言ってるかわからないがまあまあ白熱してる様子。
最終的には運転手が折れて、自転車を載せるスペースを作ってくれた。
めっちゃ余裕あるし、これだけ空いててなんで載せられないと言うの?と突っ込もうと思ったが機嫌を損ねるとフランクフルトに置き去りにされそうだったのでやめておいた。
空箱はサヨウナラ。ハエがたかっていたが僕の箱のせいではなかろう。
バスが動き出してやっと一息つける。
自宅→空港、空港→空港、空港→出発地まで全部移動を済ませ、なおかつ自転車が無事の状態を確認できるまでで全行程の半分くらいの精神力を使っていると思う。
バス乗り場の近くにケバブ屋があったが、グッと堪えて成田のラウンジから拝借してきたおにぎりを昼飯にした。
ベルリンまでの移動時間はなんと9時間。
ただでさえ座りっぱなしでさすがに腰やら尻やらが痛くなってきたぞ。
空調も微風で生ぬるく外の方が涼しいんじゃないかと思われるレベル。
ガバガバ水を飲んでいたらついに手持ちの水がなくなってしまった。
まだ出発して1時間ちょっとなのにこれはやばい気がする。
車内は蒸し蒸しして軽く汗ばむほどなので、水分がないままあと8時間は耐えられそうにない。
どうする!?
途中休憩のガソスタの売店にてついに買ってしまった!!
驚くのはそのお値段で、なんと4.24ユーロ!!!
1ユーロ137円くらいなので、なんとなんと580円!
1.5リットルで580円!
間違いなくいままでの人生で一番高い水である。
ドイツではペットボトルのリサイクルを振興していて、容器代の0.25ユーロが価格に上乗せされている。
容器をリサイクルボックスに入れれば0.25ユーロは返却されるが、それを差し引いても3.99ユーロである。
ガソスタの売店が高いことは3年前にドイツに来た時に知っていたが、これほどとは思わなかった。
このことを生涯忘れぬため、4・24事件と名付けたい。
1ゴクリあたり約20円の水は僕の体の隅々までしみわたっていった。
後半は空調も効き始め、時差ぼけのため眠気が襲ってきて気が付くとベルリンのバスターミナルに到着していた。
すでに自転車は組み立て済みなので荷物を載せるだけで完成。
今日は事前に予約してあるホテルに移動するだけなので楽勝。
移動自体でぐったり疲れると予想していたのだ。
ホテルはとてもきれいな部屋。朝食付きで7000円程度。
以前ベルリンで泊まったホテルは3000~4000円程度だったはずだが、ヨーロッパでは数年前に比べて物価が高くなっているので許容範囲である。
念のため自転車は部屋に置かせてもらった。
2日ぶりにシャワーを浴びて体力全回復。
ブログを書き終えたら眠くなってきてベッドに倒れ込んだ。
走行距離:3㎞
走行時間:19分
総走行距離:23038km