バンクシーの真贋 | 『美術商の鑑定日記』

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ここ数日、TV取材が多い。


世間を賑わしている 東京都が公開したバンクシーのネズミの絵、
作品は本物なのか? また、本物ならいくらの価値があるのか? という取材だ。

正体不明の画家、バンクシーは神出鬼没で オークションでのシュレッダー事件で一躍 世界に名が知れわたれた ストリートアーティスト。



 

以前(2000年頃)は日本のアパレル(セレクトショップ)で彼の作品が3万円前後で売られていた事は あまり知られていない。


まず現段階で あのネズミの絵が
バンクシーの 作品として本物であるという認定をするのは難しい。

理由は まず第一に バンクシー自身が 公式サイトやインスタグラム等で あのネズミの絵について何も発表していない。

次に バンクシーは 2008年頃、あまりにも 自身の作品の偽物、複製が出回り『ペストコントロール』という 鑑定・証明書を発行する鑑定機関を設立した。

 

日本訳でいうと 〝有害物を排除する〝 という意味合いである。

その『ペストコントロール』は公共物に描いた作品(ストリートピース)には たとえ本物であっても証明書は発行しない。

この様な事例は 他のストリートアーティストには よくある事例である。

(バスキア・invaderなど)

 



よって たとえ あのネズミの絵が
信憑性が高くても売買の対象には ならない。
美術品の金銭的価値は 無いという事になる。

参考までに あの絵がキャンバスに描かれ 『ペストコントロール』の証明書が付けば 2500万~3000万には なるだろう。


だが 

 

皮肉なもので 

 

あのオークションでのシュレッダー事件、

バンクシーは自身の作品が 愛好家・コレクターだけでなく、投資家等による『投機対象』になっていく事に 警鐘を鳴らす意味合いも込めて (約1億5000万円)のハンマープライス と同時に切り刻んだ。

 

 

 

だが 結果的には 世界中に彼の名が知れわたり さらに高騰し、高値で取引されている。