情けないやつ
〈結婚をしないこと〉には、たぶんさまざまな理由がある。こんな稼ぎの悪い男に(ほんとうはそう悪くもない)、女の人がついてくるはずもない。また逆に、こんなに稼いで貯めた大事なお金を、どうして自由に使われなくてはいけないのだろう。
人を好きになることに、後ろ向きの男の人もいる。〈かつての人〉に、かなう人などいるはずがない。自分の一生に一度の恋は終わった。だから結婚をしようとは思わない。
友だちはだれも結婚しない。どうしてぼくだけが、結婚をする必要があるの。
という〈理由〉の一つひとつは、しごくもっともです。いや、もっともに、感じる。でもねえ、ほんとうにそれは、自分を前に進めない理由になるの? と聞いてみたい気がします。そして、ほんとうは、恐いだけじゃないの? といってもみたい。
細々とした〈理由〉を措いて、若い(実際は若くもない)人々の背中をみていると、なぜかしら、〈情けないやつ〉という言葉が浮かんでくるのです。ただの罵声かもしれない。でも、みんな、小さなことに追われて、大事なものを忘れている気がするのです。
気がついたら、動け、といったのはだれだったかなあ。まだまだ間に合います。本気さえあれば。