「ジュンペイ!どこだ?」

 それでも裕太は、叫ばずにはいられない。

きっと自分の思い過ごしだろう…とジュンペイの返事を待っている。

(もしかしたら、そのうち…いつものように、どこかからひょこっと、

 出てくるんじゃあないのか?)

そんなことをまだ、裕太は期待している。

 

『あせるな、もうちょっと、待つんだ』

 しばらくして、ようやく龍神の声が聞こえた。

「どこにいるの?」

裕太は急いで、その姿を探す。

だが、すぐ目の前には、その姿を確認することが出来ない。

『私は、天の穴に向かって、今ジュンペイの心を探している。

 もう少ししたら、きっと…おまえの所へ、連れて帰ることが出来るだろう』

それだけ答えると、再びピタリと、その声が聞こえなくなる。

それはまるで、竜神との交信が、途絶えたような状態だ。

 

(そもそも龍神って…ホントにいるのだろうか?)

 単なる幻想なのではないのか?

段々、疑心暗鬼になってくる。

(一体ボクは、何をしたらいいというんだ?)

ただこうして、手をこまねいてばかり、いるわけにはいかない。

裕太は、ジリジリとした思いにとらわれる。

 すぐに帰って来る…と信じていたのに、あれから一向に、

姿を見せない。

(まさか…やっぱりまだ、何かあったのか?)

ジワジワと、嫌な予感が膨らんでいく。

 

 

 

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