ドトールとスターバックスを分析する | Meta☆。lic2ch

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 セブン-イレブンの「セブンカフェ」、ローソンの「マチカフェ」、ファミリーマートの「ファミマカフェ」など、大手コンビニ各社が、いれたてのコーヒーを販売するサービスに力を入れています。コンビニは店舗数が多く手軽に買えるうえ、コーヒー自体も安くて味もよいということで、人気が出ているのです。


 それによって、カフェチェーンでは顧客が奪われて業績が悪化しているのではないか、と私は考えました。実際のところ、業績にどれほどの影響が出ているのでしょうか。
 今回は、大手カフェチェーンのドトール・日レスホールディングス(以下、ドトール)と、スターバックス コーヒー ジャパン(以下、スタバ)の財務内容を分析します。なお、スタバの最新決算は2月6日発表予定ということもあり、両社とも中間決算で分析します。


■ ドトールの業績は右肩上がり

 大手コンビニでは、平成23年から平成24年度末にかけて相次いでコーヒー市場に本格参入し、最後にスタートしたセブン-イレブンは、平成25年1月からコーヒー販売の導入を始め、同年8月末に全国展開を完了しました。

 こうしたコンビニのコーヒー市場参入が、カフェチェーンの業績にどれだけ影響しているのか。

 はじめに、ドトールの平成25年3~8月の中間期の決算を見ていきましょう。

 まず、貸借対照表から見ます。(平成25年8月末)

「自己資本比率(純資産÷資産)」を計算しますと、79.0%と非常に高い水準です。会社の中長期的な安全性という面ではまったく問題がなく、財務内容が非常によい会社だと言えます。

 「負債の部」を見ると、「短期借入金」が20億円ほど、銀行とのお付き合い程度にあるだけで、そのほかの有利子負債はありません。

 一方、「資産の部」にある「現金及び預金」を見ますと、320億円も持っているわけですから、借入金を返そうと思えばすぐに返せる状態です。ドトールは抜群の財務内容を持つ会社なのです。

 次に、損益計算書から収益性を見ていきましょう。(平成25年3月から8月の半期分)

「売上高」は前年同期の549億円から580億円まで増加しています。

「売上原価」も224億円から233億円まで増えていますが、「営業利益」は39億円から49億円まで伸びています。

 どれだけ効率的に利益を出しているかを示す「売上高営業利益率(営業利益÷売上高)」を計算しますと、8.6%と非常に高い水準です。前期は7.2%です。比較的、効率的に稼げるいいビジネスだと言えますね。

 このように平成25年3~8月の業績を見る限り、同社の売上高、営業利益は伸びていますから、コンビニのコーヒー参入の影響は、この時点ではまだ出ていないと言えます。ただ、コーヒーの需要は秋から冬にかけて高まることから、通年の決算にも注目が必要です。

 キャッシュフロー計算書も見ていきます。

「営業活動によるキャッシュフロー」は約59億円稼いでいます。

 さらに、売上高からどれほど効率的にキャッシュフローを稼いでいるかを示す「キャッシュフローマージン(営業活動によるキャッシュフロー÷売上高)」を計算しますと10.3%と高い水準です。

 ここからも、効率よく稼いでいることがわかります。

 もうひとつ注目すべき点があります。「営業活動によるキャッシュフロー」のうち、資産の目減り分を示す「減価償却費」が17億円計上されています。

 一方、「投資キャッシュフロー」のうち「有形固定資産の取得による支出」は、22億円出ています。

 絶対額としては、どちらもそれほど大きいわけではありませんが、減価償却費を超える再投資をしているということが読み取れるのです。つまり、ドトールは積極的に店舗を増やそうとしているということです。

 以上のことを考えますと、ドトールの業績は今のところ、かなり好調だと言えます。


■ スタバも増収増益、コンビニ参入の影響は見られない

 では、次に、スタバの平成25年4~9月の財務内容を見ていきます。こちらも中間期決算ですが、ドトールの決算期と比べると、1カ月ずれていることに注意してください。

 貸借対照表から「自己資本比率」を計算しますと、66.8%。ドトールよりは低いものの、抜群にいい数字です。また、「負債の部」から、社債や借入金などの有利子負債を調べますと、「1年内返済予定の長期借入金」が2000万円残っているだけで、ほかには有利子負債がないので、スタバも実質無借金だと言えますね。

 「資産の部」のうち「現金及び預金」を見ますと、187億円持っています。これは一般的に、大企業なら月商の約1カ月分程度あれば十分だと考えられています。スタバの月商は、約106億円ですから、現金及び預金は月商の約1.8カ月分にあたります。十分な現預金を持っていると言えるでしょう。現金商売の強みとも言えます。

 先ほどのドトールもそうですが、コーヒーチェーンは利益率が高いビジネスです。売り上げに対してかかった原価を示す「売上原価率(売上原価÷売上高)」を計算しますと、スタバは25.2%。一方のドトールは40.2%です。

 ドトールはスタバよりサンドイッチなどのフードに注力しているため、売上原価率が高くなっていると考えられます。基本的に、原価は食べ物のほうが高く、飲み物のほうが安くなります。ただ、飲み物は原価率が低いとは言っても、廃棄などがありますから、20%は出てしまいます。逆に、20%くらいに抑えなければやっていけないのです。

 次に、収益性を調べるために、スタバの損益計算書を見ていきます。「売上高」は577億円から636億円まで伸びています。消費が回復してきたことに加え、スティックコーヒー販売などの取引件数や出店数を増やしたことで増収となったのです。


 また、先ほども説明したように、スタバのビジネスは原価率が低いことから「売上総利益」を多く稼ぐことができます。こちらも429億円から476億円まで増えていますね。このように売上総利益が多い分、広告宣伝費などにおカネをかけることができます。こうして営業利益をより稼ぎ出すことができるのです。

 そして、「営業利益」は57億円から73億円まで大幅増となりました。「売上高営業利益率」は11.6%。やはり、高い水準です。

 キャッシュフロー計算書も見ていきますと、「営業活動によるキャッシュフロー」は104億円となっています。キャッシュフローマージンを計算しますと、16.4%という高水準です。 また、「減価償却費」21億円に対して、「有形固定資産の取得による支出」が41億円ですから、スタバも積極的に出店数を増やそうとしていることがわかりますね。

 以上のことから、ドトールだけでなくスタバも好業績となっており、大手カフェチェーン2社は現状ではコンビニの影響を受けていないと言えるのです。

 はっきり言って、これは意外な結論でした。私は、コンビニのコーヒー市場参入によって、カフェチェーンの業績はもっと落ち込んでいると考えていたのです。

 コーヒー市場そのものが拡大しているのでしょうか。あるいは、どこか業績が落ち込んだところがあるのでしょうか。


■ 国内のコーヒー消費はあまり伸びていない

 今、コーヒーの消費は、コーヒーショップや缶コーヒーだけでなく、セルフスタンド型サービスや家庭用専用機など、新しいサービスや商品によって多様化していることは間違いありません。また団塊の世代のリタイアが本格化、こうしたシニア層がコーヒー消費の牽引役となっているとも考えられます。

 ただ、コーヒー市場の規模を示す目安のひとつである「日本のコーヒー 国内消費合計(全日本コーヒー協会)」によると、ここ数年でコーヒーの国内消費が大幅に伸びているわけではないようです。

 その一方で、飲料大手のダイドードリンコは、コンビニのコーヒー市場参入によって主力の缶コーヒーの売り上げが落ち込んでいるという理由で、平成26年1月期連結決算の業績予想を下方修正したという報道がありました。

 そのほかの飲料メーカーについては、今のところ業績の落ち込みは見られませんが、コーヒーの需要が高まる秋から冬にかけて、缶コーヒーの売り上げに影響が出てくる可能性があります。コンビニのコーヒーと缶コーヒーの価格帯が近いということもあるでしょう。さらには、カフェチェーンについても影響が出る可能性もあるので、次の決算では注意が必要です。

 コーヒーは集客という点でも魅力があるので、コンビニ各社は、引き続き、コーヒー販売に力を入れていくのではないかと考えられます。それに対し、カフェチェーンや飲料メーカーがどのような戦略を立てていくのか、非常に興味深いところです。(東洋経済オンライン)