22 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

美容院に優子を残し、ヨクは人気のない場所に来ていた。
「ここなら誰も来ないだろ。」
ヨクは歩みを止めた。
「そろそろ正体、現したらどうだ?」
「なーんだ。バレてたのか。」
ヨクの少し後ろで悪魔が正体を現す。
「分かるよ。俺が分からない訳ないだろ?アスベール。」
「まぁお前とは仲良かった方だからな。」
アスベールは元々天使だった。悪魔ももちろん元天使なのだが。己

の欲望を満たすため、神に敵対し悪魔になった。
「にしても、珍しいじゃん。天使が地上に居るなんてさ。今は天使は地上に降りちゃいけないんじゃなかったのか?」
「そうだよ。俺が勝手に地上に降りたんだ。」
「へぇ。お前が神に背くとはねぇ。クソ真面目な翼がねぇ。」
「背いた訳じゃない。だからお前の仲間になりに来た訳じゃないよ。」
「そいつぁ残念だ。」
「なぁ・・何で・・悪魔になんかになったんだよ。」
聞かずには居られなかった。アスベールが突然天界から姿を消した時、止めることさえできなかった自分が歯がゆく思える。
「なんでだろうな。」
「なぁ、今なら戻れるかもしれないよ?神に頼んで・・。」
「無理だよ!!」
ヨクの言葉を遮る。
「俺の手は穢れてる。もう戻れないよ。」
そう言ったアスベールは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「お前はクソ真面目だけが取り柄なんだから、俺みたいになるなよ。」
そう言うとアスベールは何処かへ行ってしまった。
「・・・何しに来たんだ?あいつ・・。」

 

その様子を天界で見ていたダンがホッと一息を吐く。
「アスベール・・ヨクを殺しに来たのかな?」
「いや、違うだろ。」
隣にいたレンがあっさり否定する。
「何でそう言える?」
余りにもあっさり否定されたので、ダンはちょっとムッとした。
「殺す気ならとっくにやってるさ。アスベールが着いて来てたのはほら、あれだよ。」
レンはアスベールがいた近辺を指差した。
「下級霊?」
「あれがウロウロしてたんだ。彼女の周りに。」
「ヨクはそれを離すために彼女を離れたのか。」
「多分な。アスベールが出てきたために、下級霊はヨクに手を出せなくなった。ヨクは今人間と同じ能力しかないからな。」
「アスベール・・あいつなりにヨクの事見守ってたのか・・。」
ダンが結論を出すとレンが頷いた。
「多分な。真意は分からんけどな。」