駅地下の専門店街を歩いていると
偶然にも目が合う女性、軽く会釈しながら急ぎ足で去って行く
「可愛い・・・」そう呟きながら「同じ感じ、服も髪も」
また偶然はやって来た
次の週末も同じ時間帯でまた目が合った
今度は僕の近くに寄ってきた
「こんにちわ・・・」
「この前も偶然会ったわね・・・」
僕よりも年齢が高い
たぶん、5歳くらい上かな・・・
きっちり揃ったワカメちゃんカット
後ろもスッキリ刈り上がっている
服装はジーンズにカッターシャツ、柄も似ていた
「少し時間ある?」
はいと答えて、近くのスタバへ二人並んでお店に入った
コーヒーを二つ頼んで
いちばん奥の椅子に腰かけた
「君もおかっぱ」なんだね
「男性にしては珍しいね・・・」
ちょっと後ろ向いて
「あっ刈り上がっている」ワカメちゃんだ
私と同じ・・・
うれしそうな表情で僕の後頭部を撫で上げた
「あっごめん、触っちゃった」と照れ笑いする
でも・・・少し伸びてるね
そんな世間話しながら
私と同じ髪形の男性なんてそうそういないから
ついつい見ちゃった
それに学生じゃないでしょ・・・
う~ん仕事は問題ないの?
僕は別に大丈夫・・・
ただ個性的な髪形だから結構お店とか大変なんだ・・・
と、ついつい愚痴が出てしまった
そうだよね・・・
じゃ~さ、今度一緒に行こうか髪切りに
私の行きつけは小さな床屋さん
おばさん一人だから気兼ねなく
それに予約しちゃうから
ほかのお客さんに会うことがないから
へえ~そんなお店あるんだ・・・
あっごめん、名前言ってなかったわね
迫田真紀です。仕事はデザイナーです。
あなたは、「僕は坂下雄太」といいます。
僕もデザイナーです。
偶然!同じなんだね
今日はこれから予定ある?
ないです。
そう答えると、「じゃ~軽く飲みに行かない?」
そうだね・・・僕は偶然の出会いに感謝しながら
真紀さんの後をついて行った
素敵なイタリア料理屋でワインを数本と
パスタそしてお気に入りのトマト料理を口にした
意気投合して酔いながら
年齢の話も・・・
僕より6つ上だった
独身、彼氏なし
ちなみに僕も彼女なし
酔った勢いで真紀さんのお部屋に行ってしまった
可愛いお部屋でさらにワインを開けて
いつしか同じベットに横になったいた
会ったその日から
彼氏、彼女としてお付き合いが始まった
その週末、真紀さん行きつけの床屋さんに
予約して二人で行った
真紀さんのワカメちゃんカットが完成すると
「どうぞ・・・」
おばさんに案内されて椅子に座った
真紀さんがおばさんお横に来て
僕のおかっぱを注文する
「前髪は短く、耳半分、後ろは3ミリバリカンでジョリっと刈り上げて」
おばさんは真紀さんの言葉に頷いて
言われたままに切っていく
「う~ん後ろいちばん短い刃でお願いします!」
えっ・・・それはちょっと
僕の静止も空しく、真紀さん好みになっていく
ほら「こっちのほうが可愛いよ・・・」
あと眉も・・・
おばさんに小声で注文する
顔剃りも終わって椅子が起こされると
眉周りも真っ青に剃られている
「似合う!」
「私好みね」
そう言いながら僕の後頭部を何度も撫でた
数日ごとに会って食事したり
真紀さんの部屋に泊まったり
「雄太!下向いて・・・」
真紀さんは箱の中からバリカンを取り出して
「これの出番ね・・・」
銀色の手動バリカン
「カチカチカチ・・・」
「カチカチカチ・・・」
少し伸びかけの後頭部がまた真っ青になってしまった
そうだわ、床屋さん代もったないから
私が刈ってあげるね・・・
うれしそうに何度も後頭部を
「カチカチカチ・・・」
「カチカチカチ・・・」
刈りこんでいく
終わると満足気に
「うん!大丈夫虎刈りになってないわ・・・」
独り言を言いながら
後頭部を撫で上げた
つづく