ずいぶん前までは小さな床屋さんとおばさんなんてお店たくさんあった

最近は低料金の大型理髪店があちこちにOPEN、フェチ心が寂しくなる

 

それでも床屋散策はやめられない・・・

密かに探して見つかると無性に入りたくなる

でも、一応通り過ぎて胸の鼓動を確かめる

 

「ねえ・・・床屋行きたいでしょ・・・」

そんなことないよ、と早歩きでお店から遠ざかる

わたしは顔剃りしたいな・・・気持ちいいし

 

「えっ」と彼女の顔を見る

彼女は個性的なツーブロックで髪は肩くらいまである

いつも後ろで結ぶか、三つ編みにして刈り上げを見せる

前髪も結構短いというか。。。ないに等しい

 

また散策を続ける、駅から離れた小さな商店街、住宅街を散策する

鉢植えが店先に並ぶ、昭和な理髪店が佇んでいる

「ここ・・・」と言いかけたとき、店主らしきおばさんが出てきた

いかにも床屋さんという格好に目が釘付けに

 

それでもまた遠ざかろうとする・・・

「あ、大丈夫ですよ・・・どうぞ」

彼女が床屋に入っていく、入りかけたとき、「直樹!大丈夫だって・・・」

比較的大きな声で呼び留める

 

振り返りながら仕方なく彼女につづく

床屋のおばさんに「私は顔剃りでこっちは短く!だよね」

黙ってうなずいてしまった

 

小さな床屋さん、洗面台は横にあり、バリカンが綺麗に並んでいる

清潔感はあるね、彼女は顔そりの注文に余念がない

特に眉は注文が細かい、それでもおばさんは丁寧に顔を剃る

30分ほどで彼女の顔はツルツルになっていた

 

椅子を起こすと、おばさんが首にタオルを巻いてクロスを掛けた

ちょっと綺麗に揃えますね・・・と言いながらバリカンを持って来た

いつもは・・・という問いかけに、いちばん短くと先に僕が応えた

あと前髪もきっちり揃えてください。

 

おばさんは「これ以上切るの・・・ずいぶん短いけど・・・」

確かに1センチから2センチくらいしかなく、彼女は前髪を伸ばそうとしていた

僕の顔を鬼の形相で睨みつける

 

おばさんは言われたまま、アタッチメントの取れた黒くて大きなバリカンで

容赦なく、彼女の後頭部と耳の上を剃り上げる、「電気音と、ジ~ジ~」と

髪を剃る音がお店に響く、あっという間に真っ青な剃り上げが完成した

 

これぞ!プロのテクニック!僕はうれしさが溢れてきた

次に前髪を濡らして、真っすぐ梳かす、真横からハサミが「ジョキリジョキリジョキリ」

数センチ弱の前髪がクロスに落ちる、なんども、なんども櫛で梳かして前髪を揃える

 

満足げなおばさんの表情とは別に僕を睨みつける

 

蒸しタオルで剃り上げたところを拭いて、前髪を軽く乾かして完成した

 

「うひょ~短い!究極の前髪に仕上がっている」

 

椅子から立ちがると僕の横に来て、「知らないからね・・・」と手を抓った

 

「今度は彼氏さんね・・・どうぞ!」

僕の髪は彼女が切っていた、というか揃えていた

だからボブっぽい感じ、彼女が好きな髪形だった

 

「ま!揃えるくらいだろうね・・・」そう思っていたが

彼女は昭和風な坊ちゃん刈りにしてあげてください

ちょうど、壁に貼ってあった昔の髪形の写真、それもお子様ヘアスタイルを指さした

 

僕は言葉を遮ろうとしたが、短いほうが可愛いのでバリカンでと付け加えた

床屋のおばさんも写真も指さしながら、結構短くていいのね・・・彼女に聞くと

「う~ん」と短くお願いします!と返答した

 

僕の首にタオルが巻かれて、クロスが掛けられたとき

床屋に近所のおばさん達がやって来た、「あらお客さん!」めずらしいわね・・・

そう言いながら勝手に冷蔵庫を開けてお茶を飲み始めた

彼女にもお茶は入れられて、世間話を始めていた

 

理容師さんは先ほど彼女に使用したバリカンを持ち、後頭部から持ち上げた

電気音の響きと髪を剃る音が混じる、バリカンの通り道は白い

容赦なく、後頭部全体と、耳上3センチくらいまでバリカンは熱を用いて剃り上げる

僕は目をジッと閉じている、外野席のおばさん達は、「あらずいぶん刈るのね・・・」冷ややかに眺める

5分くらいだろうか、僕の後頭部と耳上は真っ白に剃られている

 

理容師さんは櫛とハサミで容赦なく短く切っていく

「ジョキジョキジョキ・・・ジョキリジョキリジョキリ」

僕のボブは跡形もなく、短くなっていく、坊ちゃん刈りというよりはスポーツ刈りに近い

梳きバサミで「ザクザクザクザク・・・・・」こちらも容赦なく梳いていく

外野のおばさん達も見入っている

 

僕は恥ずかしい思いで床屋の椅子で生贄状態

 

ずいぶん短くなった最後に、前髪を生え際辺りで真っすぐ揃えられてしまった

理容師さんは「可愛くなったわね・・・」と話しかけてきた

彼女に「どうですか・・・?」と聞くと後頭部剃ってください!と付け加えた

 

理容師さんは剃っちゃっていいのね

彼女はそこの手動バリカンでお願いします!と付け加えた

理容師さんは「これ!」でね、ハイハイと嬉しそうに

手動バリカンで後頭部を剃り上げた

 

彼女は満足げな表情で、世間話に耳を傾ける

 

おばさん達は「ずいぶん可愛い髪形ね」と言いながら鏡を覗き込む

 

僕は恥ずかしくて耳が真っ赤になってしまった

 

髪を洗うときそのおばさん達の横を通り、タイル張りの洗髪台で髪を洗った

顔剃りも一段落して、ようやく彼女好みの散髪は終了した

 

椅子を起こされると、前髪が短いためか額の横が真っ青に剃られていた

しかも生え際に沿って丸く、まるでお子様のように剃られている

 

椅子から立ち上がって、彼女は二人分のお金を払ってお店を出ると

僕のお尻を思いっきり叩いた!「痛い!」でしょうね・・・

 

おわり