じゃ~ここに座って・・・

縁側に道具を並べて、椅子を用意した

 

「うん」椅子に座ると手際悪くクロスを巻いた

「おかっぱ」揃えるね・・・

そう言いながら霧吹きで髪を濡らした

震えそうな手さばきで櫛で髪を梳かし、ハサミを入れた

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

頬の横あたりにハサミが触れる

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

案外難しいな・・・独り言を囁く

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

右側、左側、また右側と前を右往左往する

頬の上辺りでハサミが触れる

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

手のひらに汗をかきながらハサミを入れる

 

「ごめんちょっと下向いてくれる・・・」

横から後ろへハサミをいれる

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

延長コードにバリカンのコンセントを差し込んだ

「ヒュ~ン」と高い音とともに、冷たい刃がうなじから滑りこむ

「ガリガリガリガリ・・・・」

耳もとでバリカンのモーター音が響く

「ガリガリガリガリ・・・・」

何度も上下させてバリカンを這わせる

襟足がだんだん涼しくなっていく

 

必死な表情で散髪を続ける芳美は額に汗をかいている

 

「う~ん」うまくいかないな・・・

 

ちょっと待ってて・・・

そう言いながら、走って祖母のいる床屋へ急いだ

 

中途半端な髪型で芳美と一緒に床屋へ行った

 

「あらあら・・・」諦め顔の祖母が芳美に話掛けた

まだまだ見習いさんなんだから・・・と言いながら

僕の髪をマジマジと見た

 

「あ~」どうしようかね・・・

これで揃えたら、ワカメちゃんカットだね

 

「泣きそうな表情で謝る」芳美

「いいよ!大丈夫だから」

「じゃ~揃えてください」

そう言うと、バリカンで後頭部を剃り上げた

横も後ろも手早く揃えていく

「ジョキジョキジョキ・・・」

 

不揃いの前髪も真っすぐに揃えた

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

 

芳美はジッと祖母の散髪に見入る

 

「はい!」おわり・・・

髪洗うね・・・

あと顔剃りもやって上げるね

 

はい!

やっと2時間の散髪が終わった

耳上から後頭部に掛けて真っすぐ揃っている

後頭部は青々と剃られている

前髪はこめかみから直角に短く揃えられている

 

昔の女の子はみんなこんな髪形なんよ・・・

僕は恥ずかしくなった

 

だんだん現実になってくる

「う~どうしよう!」こんな髪形じゃ学校行けない!

後ろ青いし・・・

 

「すみません!もしこの髪形変えるとしたら・・・?」と尋ねる

「そうだね・・・坊主しかないね、後ろ剃ってあるからね・・・」

ツルツルに剃る坊主だね・・・

 

僕はお礼を言って床屋を後にした