自給自足生活も慣れてきた

娘二人は畑仕事、近所農家の手伝いで忙しくしている

旦那の聡も自家農園に日々、汗を流している

 

娘たちは肉食から野菜中心、額に汗を流しながら動いている

成果で段々、痩せてきた

 

太っているのはまち子だった

実家との往復と床屋開業を目指して四苦八苦している

実家に帰ると母親から古い理髪店がずいぶん前に閉まって

空き家になっていることを聞かされた

早速、その店へ聡と出向いた

 

家からは数キロ離れた小さな街にひっそり佇んでいた

瓦屋根の小さな2階建ての家は誰も住んでいない

今は町の管理になっていて、引き取り先を探していた

 

聡とまち子は町の役場へ出向き、廃業した理髪店の使用許可を求めた

役場の担当者は、賃貸料はゼロというか、土地含めて少額で買い取ることを

進めてきた、しかしな~お金ないしね・・・・なんて聞こえるように相談したら

毎月数千円の3年払いで提案してきた

「ま!いいかぁ・・・」

道具も、クロスも全部揃ってる

早速家に帰り、娘の静香と凛香を連れて、4人で廃業した理髪店へやって来た

「わ~ほこりがすごいね・・・・」凛香が呟く

ママここで床屋さんするの・・・?

 

まち子は「そうだよ!お金少しでも稼がなきゃね・・・」と笑った

住まいの方は適当で床屋の中を綺麗に掃除した

当面は予約制にするよ!こんな田舎で来る客待っててもね・・・

まち子はクロスを持って来た紙袋に詰めた

タオルは・・・・ダメだね、これはポイしちゃおう!

時間はあっという間に過ぎて、実家から借りた車に4人で乗り込んだ

 

数日後、洗ったクロスと実家からもらったタオルを持って理髪店にやって来た

凛香に手伝ってもらって家の方も片付けた

休憩くらいできればね・・・

何も置いていない、畳の部屋に古い裸電球がぶら下がっている

休憩にしようか・・・、持ってきたおにぎりを二人で食べる

 

まち子は長い髪を邪魔そうにしている凛香に声を掛けた

お客さん1号は凛香ちゃんだね、髪長いの邪魔じゃない?

凛香はあどけない表情で、ちょっと邪魔かも

凛香は短パンにTシャツ姿で畳に座り、髪を弄りながら

切っちゃおうか・・・

 

まち子は目をキラキラさせながら、食べたらやるよ

 

そう言いながら食事を片付けた

凛香ちゃんここ座って、真っ赤な武骨な散髪椅子に腰掛けた

まち子はさっぱりお任せでいいね・・・

凛香はさほど気にする素振りもなく「お願いします」と頭を下げた

 

まち子は凛香の首にタオルを巻いて、真っ白なクロスを掛けた

古いラジオに電源を入れて、AMラジオが流れた

 

ブラシで髪を梳かししていく

おもむろにハサミを取り、首辺りで散切りしていく

「ジョキジョキジョキ・・・」長い髪がクロスを滑る

首からさらに上へと切る「ジョキリジョキリジョキリ・・・」

耳が半分辺りで真っすぐに揃えていく

懐かしいラジオから流れる音楽で凛香はすっかり眠っている

前髪も櫛で下ろし額真ん中辺りを上に丸く揃えていく

丸い顔に短い前髪が額に沿うように揃っている

 

凛香はいびきをかいて熟睡している

 

まち子は電気バリカンのコンセントを椅子下に差し込み

刃をいちばん短いものに付け替えた

「ビュ~ン」と甲高い音が理髪店に響いた

次の瞬間、凛香の頭を前に倒して後頭部を露わにした

「ガリガリガリガリ・・・・」

「ガリガリガリガリ・・・・」

バリカンの道筋はは真っ白なラインが引かれていく

何度も何度もバリカンは凛香の後頭部を上下する

後頭部が真っ青になった

 

まち子は電気バリカンをコンセントから抜き

大好きな手動バリカンで凛香の後頭部を剃り上げる

「カチカチカチカチ・・・」

「カチカチカチ・・・」

もみあげも真っ青に剃っていく

 

最後に髪を丁寧に揃えて、ワカメちゃんカットは完成した

 

それでもまだ熟睡している

 

クロスを布からビニールに付け替えて

シャンプーを凛香の頭に振りかけた

揉むように泡立てて、洗っていく、泡まみれになったころ

目を覚ました

「ここに頭入れるように腰曲げて・・・」

凛香は鏡を見ることもなく、引き出した洗面台で頭を洗われている

 

しばらくすると、終わったから椅子に戻るよ

と同時に椅子倒すから・・・、また鏡を見ないまま椅子は横たわった

後頭部が涼しいことには気が付いた

それでも、また睡魔が襲ってそのまま熟睡してしまった

まち子は娘の顔を綺麗に剃って、丁寧に顔をマッサージした

 

約1時間後、終わったよ

肩を叩かれて、目が覚めた

鏡に映っている前髪の短い、それも額に沿って丸くなっている

耳半分で切り揃った髪は田舎の娘そのままだった

「短・・・・・」

それでも「あ~さっぱりした!」

ありがとうママ

髪形も服装も気にしないのは聡に似たからか・・・

そう思いながら後片付けをした

 

つづく