規制改革会議の意見書について 続き | 風のかたちⅡ

規制改革会議の意見書について 続き

最低賃金を引き上げると、生産性が低い労働者が失業する、という規制改革会議の意見書に、少しだけ理屈を言いたくなる。目


現在の最低賃金では、生活保護給付に届かない地域が出ていることは既にかなり報道されているが、最賃引き上げに反対する「意見書」の主張は、生活保護との逆転現象をそのままにしておけ、額に汗して働くよりは国のお世話になって生きる方がいいと勧めているようなものだ。


こういう大胆なことをいうのだから、どの程度の最賃引上げがあると失業率がどう上昇するのかとか、真面目な推計をベースにした発言なのだろうと思いきや、意見書のどこを見てもその陰もない。


また、意見書の主張は、様々な勤労者グループの就業率の引き上げを、首相直結の成長力底上げ戦略構想会議が提起していることとも矛盾することになる。


わが国は、「生活保護」スティグマが欧米に比べて極めて強く、生活保護水準に達しない低賃金就労にもかかわらず、保護を申請しない人が少なくないと聞く。「意見書」はこうした「美風」も改革して、生活保護を受けることを勧めたいのだろうか。


確かに、最低賃金が企業にとって受入可能な水準であることは、実効性を確保するうえで大切だ(「研修生」という名の「労働者」に頼らなくては存続できないような企業まで含めるのかは疑問に思うが)。しかし、日本の企業や労働市場についての実証なしに、経済学のテキストの理屈をそのまま引いて最賃引上げに反対するとしたら乱暴なことだ。「意見書」の背後にいる福井氏が最近書き散らしている「学術的」装いをとった「権説」をみるにつけ、そういう乱暴をしてはいないかと不安になる。


ことは、国民の生活に関わる問題なのだから、経済学のテキストレベルの発想で論じられるくらい迷惑なことはない。