日本文理高校  | 風のかたちⅡ

日本文理高校 

ややっこしい話ではない。

野球後進県と言われて久しい故郷のチームのミラクルな健闘に拍手したいだけ。わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん


決勝戦、4-10の9回2死ランナーなしから5点を追い上げ、あわや同点から逆転という状況に名門チームを追いつめたのだから、賞賛せずにはいられない。


惜しむらくは、勝利の女神が最後にほほえまなかったこと・・・序盤から中盤、熱暑の球場にたつ陽炎のように、ゲームのアヤは中京へ、また日本文理へと揺らめいていた。そして、最後の最後、日本文理にくるようにみえて彼方へ傾いて終わった。


戦前の下馬評では1回戦突破かどうかくらいの無印チームだったが、フロックではない勝利を引き寄せる底力があると2試合目あたりから感じられた。全員がよく守り、好機には畳みかけるように鋭い打球を飛ばす。体格、素質がずば抜けているわけではないが、野球センスがあり、よく鍛えられた選手をそろえたチームだ。


まず、エースがいい。直球のスピードは130㎞台の並の投手に見えて、高校生とは思えない冷静さで、切れのある直球とスライダー、チェンジアップを上手く組み合わせて使っていた。しかも、相手打者の力やゲームの状況をみながら。そして何より、ピンチに表情一つ変えない肝の太さがいい。中京相手にもその力は十分に発揮されたと思う--少なくとも6回裏、2死から相手エースの2点タイムリーで2-4にされた後の次打者を討ち取ったと思えたときまでは。高くバウンドした一塁線の当たりは彼のグラブに納まったのに、一塁手も飛び出していてアウトをとれず、それが次打者の走者一掃2塁打につながった。サスガの彼も一瞬気落ちしたとしか思えない。しかし、その後も2点にとどめて最終回のドラマにつないだ粘りは見事。


合わせて特筆すべきは、最終回6点差2アウトランナーなしからの各打者の信じがたい粘り--単に「粘り」というだけでは言い尽くせない質の高いパフォーマンスだ。1番の切手君から続いて確か3,4人、2ストライクに追い込まれながら、諦めや動揺のいろがない。中京のエースの真骨頂である低めの変化球をカットし、或いはきわどく見切って、球数を増やさせ、並行カウント、フルカウントに持ち込んでいく。そして、唯一ともいえる甘いボールがくればためらいもないスイングで鋭く打ち返し、きわどい球は見切って四球にする。


強くスイングすることと見切ることの両方に備える難しさは、自分自身の同じ年代の頃を思いおこしてみても分かる。しかも、トーナメントゲーム決勝戦の最後の1球というぎりぎりの状況の中で各打者が坦々と、そういう難しい仕事を続けていく。こういうのは、これまでの甲子園での高校野球シーンでも見た記憶がない。驚異とか奇跡の粘りといわれる所以だと思う。


そうした粘りへのオドロキと感動が間違いなく甲子園球場全体を覆っていったのが分かる。なお4点差の満塁で打席にたった日本文理のエースに対して、球場が「伊藤コール」に包まれたのは、それまでの彼のピッチングへの評価と、各打者のゲームを捨てないだけではない、打席での信じがたいパフォーマンスの連続がもたらした結果だろう。録画をみていて、そう思う。


そして、声援の中で、背番号1も見事に2点タイムリーでつないで8-10、更に代打のクリーンヒットで9-10まで追い上げる。このころになると球場を覆う雰囲気が打者に打たせていたとしかいいようがない。流れは明らかに逆流していた。最後の打者も、その中で見事に振り抜いている。あの強い3塁ライナーが、もう少し高いか、左右どちらかに寄っていれば、ゲームはどうなっていたことか・・・。


オイラのころには、四国のチームや岐阜、愛知のチームと当たって試合の形になることなど想像もできなかった。初戦はそんな危惧を振り払う逆転、準決勝の岐阜商戦も、地域差などなんにも感じられない互角のゲームで最後に勝った。決勝も、6回の6失点で力つきてゲームが壊れるのかと思ったのは、弱気なワン公の気苦労だった。ゲームを壊さないどころか、「野球は2死から」という、分かったようで分からない言葉を思い出させる攻撃だった。


何がこういう奇跡的なシーンを生んだのかは分からない。日頃の質の高い練習の成果というのは当然、野球後進県といわれてきた地域の頂点にこういうチームが生まれたのは、「地域力」みたいなものもあるのかもしれないと思う。そういうものがプロ、アマを問わず、都道府県単位での勢力地図を変えるのではないかと思ったりする・・・J1アルビは地域プロスポーツの成功例の最たるものだが、それと直接には無関係なのはいうまでもないが、、最弱と言われた高校野球で、県内選手中心のチームが決勝のドラマをつくるまでになった。GM的な役割を果たす人材や、チームを鍛える現場の指導者など、いろんな人材がそろわなくては、こうは行かない。昔はそういう雰囲気が乏しかった地域に、そういう人的な、組織的な基盤が形成されているのだろう。


ロケット奇跡といわれる9回2アウトランナー無し、4-10からの反撃。わんわんわんわんわんわんわんわんわんわん

ノーカット版

1/3 http://www.youtube.com/watch?v=bEiNB46Ju7w&feature=related

2/3 http://www.youtube.com/watch?v=qOLPBRc8IPc&NR=1

3/3 http://www.youtube.com/watch?v=wd3GoiU9h28&NR=1

ダイジェスト版

http://www.youtube.com/watch?v=aD8qbZFiDsA&feature=related

その他

http://www.youtube.com/watch?v=_fwPWpB6Zf0&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=5xxiW8TNXwQ&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=dMbsUejhRK0&feature=related