よかったです!!--自治体非正規職員への賃金返還請求訴訟 | 風のかたちⅡ

よかったです!!--自治体非正規職員への賃金返還請求訴訟

市民の側から行政を監察し非違等をただすオンブズマンの意義を云々するつもりはないが、中には酷い「オンブズマン」もいるものだと驚き呆れさせられたのが、シジフォスさんが紹介している「枚方市(非常勤職員手当支給)事件」だ。

詳しくは、シジフォスさんのブログのとおりだが、http://53317837.at.webry.info/201103/article_3.html


>この裁判は、住民である原告が、枚方市が給与条例に基づき一般職「非常勤職員」に対し、特別報酬として期末手当・退職手当を支給したことについて、給与条例主義に反し違法であるとして提起した住民訴訟

>2008年10月31日、一審の大阪地方裁判所は、原告の主張を認め、「枚方市は、元市長個人に対し損害賠償を請求するともに、手当を受領した非常勤職員に対し不当利得返還の請求をすべき」とした


これに対して

>昨年9月17日、大阪高等裁判所は、枚方市非常勤職員手当住民訴訟(「損害賠償請求及び不当利得金返還請求控訴事件」)において、控訴人(枚方市長)および補助参加した非常勤職員の主張を全面的に認め、逆転勝訴判決を下した。

というものだ。的確な判決であり、本当によかったです!!!と思う。


原告・「住民側」は、条例違反を理由としているが、「非常勤職員」にまで期末手当・退職手当の返還を求めている。ここに、ワン公的には「異常」さを感じる。「異常」といってわるければ「フツウーでないもの」を感じる。それとも、ワン公の感じ方の方が「異常」で訴訟の原告・住民側の感覚の方がフツウーなのだろうか。


ワン公的感覚はといえば、

今回、期末手当などの返還請求の被告となった人たちは、改正パート法の差別取り扱いの禁止(8条)や均衡処遇(9条等)の規定、労働契約法3条2項のことなどもあり、提供する労務の内容等に応じて処遇の改善、向上が図られるべき労働者と近似した労働者グループと思う(公務員とはいえ)。


「住民側」には、この処遇改善的発想、働いている人同士という目線はサラサラないのだ。あるのは、"給料ドロボー、金返せ"という、広く見られる公務員叩き的感覚ではないか。「公務員」とはいっても「非正規」なのだということに全く意識が及んでいないことに驚く。


役所の「非正規職員」というのは、民間とは事情がことなるにしろ、職員定員の縮減と行政需要の拡大の狭間で、事務補助にとどまらず、保育施設、病院など様々の行政サービスの領域に広がっていると承知している。正規職員と同様か類似の職務をこなす一方で、雇用が不安定で処遇も劣る非正規「身分」に甘んじている例がすくなくないと聞く。要は、必要な行政サービスとしての労務提供を、適切さを欠いた対価で提供することを求められている存在であるのかもしれないのだ。


こういう人たちを訴訟の対象とする背景にあるのは、「行き場のない怒り」「ルサンチマン」、経済・社会システムの行き詰まりという汚泥から湧くガスのようなものではないのか。そうしたものに発する、またはそうしたものを悪用する弱者攻撃だとしたら、情けない。


以下は、シジフォスさんの判決解説部分の引用だ。(下線部ワン公)

>本件給与条例において少なくとも給与の額及び支給方法についての基本的事項が定められており、かつ、その具体的な額等を決定するための細則的事項が本件非常勤職員給与規則に定められている本件においては、…給与条例主義に反するものではない…」とし、具体的基準及び具体的数値を規則に委任したことについて合理性があると判断し、枚方市が非常勤職員に対して手当を支給した行為は、給与条例主義に反するものではなく、適法であるとした。

さらに

>「非常勤職員」に対して、支給された手当の不当利得返還請求義務についても否定した。その理由は,任用手続が公序良俗に反するとか重大かつ明白な瑕疵が存するなどの特段の事情のない限り、支給された給与については、職員は命ぜられた職務に従事したことの対価及び生計の資本として受け取ることができ、これを不当利得として返還すべき義務は負わない

>当該の非常勤職員の受け取った一時金や退職金が不当利得かどうかという点については、「正規職員と比較して不当に高くはないこと、公序良俗や社会正義に著しく反するものではない」などとして、「返還する必要はない」とされた

ワン公的にとっても頷ける「まっとうさ」を感じる。


ついでに、これは良い方の驚きだが、「住民側」に対して、自治労と自治労連が共闘したということもたいしたものだと思う。こうした「異例」の運動があってはじめて、良識ある判決がある。シジフォスさんの義憤、当事者のコメントにも強く共感する。コメントの最後にあるが、官民問わず、一時金・退職金は「非正規職員」であっても処遇の均衡上、さらに退職金は非正規という不安定さへの代償としても、考えられるべきことであって、「返還請求」の対象にするなど、とんでもないことなのだ。


>行政オンブズマンと称する「公務員叩き」の訴訟は全国で繰り広げられ、一部では、この初審判決のように司法まで加担する状況になっている。しかし、非常勤職員という公務職場の中でももっとも弱い労働者を叩こうとするオンブズマンの姿勢は許し難い


>自治労連のHPには、こんな当事者のコメントも紹介されているので、転載させていただく。
>>国保徴収員さんからは、「勝利できて本当によかった。いろんな人に支援してもらった。本当

  にありがとうございます」。また、延長保育士さんからは、「5年前に裁判所から通知が来たと

  きに、個人なら泣き寝入りしかなかったが、組合として闘うことになり、いろんなところへ支援

  要請に行ったりして、応援してもらった。こんなこと出来るのかと新鮮な思い、感激した。みん

  なの力でここまでやってこれた」・・・弁護団からは「この判決はゴールじゃない。(同じような

  仕事をしていても)正規職員の半分でしかない。均等待遇に向けてさらに奮闘してほしい」と

  の激励もあった。
  府下には自治体職場だけでも2万を超える非正規職員が働いている。任期付き職員制度の

  導入や雇い止めも発生しており、均等待遇の立場からの処遇改善、一時金・退職金制度の

  確立、雇い止め阻止など私たちが乗り越えなければならない課題は多い。