今、検査のため入院している。

数年前から異常の数値をしている肝臓の組織をとって、調べる訳で。

物心ついて初めての入院だ。

全てが新鮮だ。

今日のお泊まりは、4人部屋の対角線上に、私とご老人。

私は溜め込んだ本を読むために、カーテン仕切って読書一筋。

ご老人、よく屁をこく。

ブ。

ヴアァヴォ。

ボン。

バリビバッツッ。

ピーィイッ。

ヒリィ~ポン、ポン。

屁とはここまで旋律豊かなものとは、思わなんだ。

それはさておき、そのご老人に見舞いが。

声がアルコール焼けしているであろう女性。

まるで、この病院のすぐそばにある場末のスナックのママさんのよう。


下品ながらというか、お二人とも声が大きいので、聞こえてしまうのだが、夫婦ではないらしい。

娘さんにも知られていない関係っぽい。

「最近、くっついてないね」

「そうだね」

ごそごそごそ。

「うんー」

なんか抱き合ってるわ。

お盛んなこと。

その後も色々と話を聴かされる。

看護婦さんが検診にきて、

「娘さんですか」

とかきいてる。

ご老人、

「そういうことにしておく」

なんて、言ってうれしそう。

その後、アルコール焼けした女性は帰る。

晩ご飯の配膳のときに、さっきの看護婦さんに、

「あれは、○○○○さん」

とか

「俺、一人になって五年。それからお世話になっている女性」

とか

「この近くに住んでる」

とか紹介してた。

それにしても、昼ご飯、晩ご飯と出して頂いたが、量が少ない。

24時間営業のコンヴィニエンスストアーが併設されているので、そこに客を誘導する作戦であろう。

なので、その作戦にまんまと引っかかり、これからコンヴィニエンスストアーに買い物にいくことになるであろう。

まあ、病院のお食事ってこんなもんなんだろうね。

昨日、こちらの病院にお世話になることで思い出したことが。

昔、ここの病院に勤めていた看護婦さんと付き合っていた友達のことだ。

彼、浮気はしまくるわ、彼女から金は借りまくるわ、まともに働かないわ。

そんな彼に愛想を尽かしたのだろう。

ある日、二人が同棲していた彼女のマンションの彼が車を停めていた駐車場には、堂々と彼女の浮気相手の車が。

その数日後、彼、そして彼女と彼女の肩を持つ彼女の同僚との修羅場に、私もなぜか同行させられた訳であった。

その後、何日にも渡って、傷心の彼に付き合い、呑んでいた訳でもあった。

呑みながら失恋について語り、泣く彼。

泣きながら、

「俺、○○とやりたいから、○○のバイト終わるの待つべ」

といって琴似界隈で待ち伏せするところは、さすがだと思っていた訳である。

そんなこんなで3カ月からがたったある日、失恋からすっかり醒めたような声で電話が。

今すぐ会いたいと。

会う。

「俺はビッグになって、あいつを取り戻す!」

「ビッグになれるビジネスをはじめた!」

「10年以内にモンゴルにいく!」

「お前は夢がないのか!」

こんな話を目を輝かせて、私に語る訳である。

全身生殖器のような、へそから下に人格はなかったものの、明るく楽しく優しい彼はどこかに行ってしまったと思った。

悲しかった。

そんなことを思い出したので、久しぶりに彼にメールしてみた訳で。

ビッグにならなくてもよいのだが、元気にやってさえくれれば。

元気です!

そんな返信が欲しくて。