次の日 玄関のドアを開けると
織田があたふたしながら俺の所に寄ってきた


「うわっ、なんだよ織田!」


何だかその寄り方が気持ち悪くて、手で織田を押しながら笑うと

そんな俺と対照的に、織田は真剣な顔で俺の肩に手を置く。


「お前大丈夫だったのかよ!?」


「いや、何のこと?」


「長濱さんの事だよ!」


「あー、それは大丈夫じゃ   無かったな...」



織田の言ったことを理解して、俺の顔はひきつった。



「ごめん!俺が昨日強引にでも引き止めて言っておけばよかったのにさ」


「いやいや織田のせいじゃないだろ?自業自得だよ」


頭を下げた織田を見て、なんだかすごく申し訳なくなった...

織田の言葉を適当に流して
馬鹿みたいに舞い上がってた俺が悪いのにさ。



「だけど、渡邉さんもいい人だよな」


「何で渡邉さん?」


織田の口から突然でた渡邉さんの名前。

織田は空を見上げて数回頷く、言い方や行動から渡邉さんに感心しているように見えた。

だけど俺は何故 彼女の名前が出てきたのか分からなかった。

俺と渡邉さんが会ったのは知らないはずだし...


そんな事を考えていたら
織田は目を見開いて、俺の肩にまた手を置きブンブンと前後に揺らす。


「お前渡邉さんから聞かなかったの?」


「何を?」


「昨日渡邉さんと会っただろ?それ俺が長濱さんの噂を言ったからなんだよ」


「じゃあ、あれって偶然じゃなかったの?」


「お前なんかの事を相当心配してたけど、会えたならよかったよかった」


「織田!お前それもっと早く言えよ!」


「おい、まなき...!?」



手を叩いてほっとしていた織田をのけて、俺は足に力を入れ動かす。


織田から聞いたなら 渡邉さんは俺の事を探してたのか?

どこにいるかなんて知らないはずなのに
なんの為にそんなこと...



俺はいくつもの疑問を持ちつつ、自分の中の全力で足を引きずりながらも学校へ走った。


すると丁度 登校してきた渡邉さんが校門に見えた。


「渡邉さん...!」


息が切れる中 名前を叫ぶと、彼女は振り向く。

俺はゆっくり近づいて彼女の手を握った。


「ちょっと来て」


「あっ、うん...」


渡邉さんが頷いたのを確認して、俺は体育館の裏まで歩いた。

体育館の裏について、俺は手を離し渡邉さんと向かい合う


「まずは昨日お礼言えなくてごめん、ありがとな」


「ううん。たまたま、志田くんが居たから声掛けただけだよ」


なんて彼女はそんな嘘をついた。

織田から聞かなかったら俺はずっと気づかなかったと思う、ただの偶然だって思ったまま...


渡邉さんから言わないってことは、触れられたくないのかもしれない

だけど、それでも俺は詳しく聞きたくて話を続けた。



「織田から聞いたんでしょ?ねるの話...」



「それ織田くんから聞いたの?」




渡邉さんの問いに頷くと、渡邉さんの顔はどんどん赤くなっていった。




「俺の事探してくれたの?」


「その、心配で...知り合ったばっかりなのに昨日あんなことして気持ち悪いよね、ほんとごめん!」



渡邉さんは謝ったあとすぐ背を向けてその場を去ろうとした。



だけど俺は、手を伸ばして彼女を引きとめた。