愛佳に初めて会ったのは
仕事終わり、クタクタになりながら立ち寄った喫煙所だった。


フードを被った中性的な顔立ちの人が
気だるそうに煙草を咥え、煙を吐いていた。


その人の雰囲気なのか

喫煙所に入ろうと手に煙草を持った人達は、静かに閉まってその場を去っていった。


広めの喫煙所は1人だけが使っていたのだ。


私も煙草を吸いたかったのだが少し躊躇してしまう

でも他人に変な絡み方をしてくる人ではないことを願って、私は喫煙所の中に足を踏み入れた。



その人から少し離れたところにある灰皿の近くに立って、煙草とライターを取り出した。


カチッとライターの音が静かな喫煙所に響くと、心臓がドキッとする


煙草に火がついて 煙を吸い込もうとしたところで

チラッとその人を見ると
私のことを睨んでいて、ビクッと肩が震えた。


その時、煙が目に染みて思わず煙草を灰皿で潰した。


瞼をパチクリと動かして、痛みが消えたところでまだひと吸いしかしていない煙草を駄目にしてしまったことにショックを受けた


少し前に たばこ税が増税した為 1本を大切に吸っていたのだ。


仕方なく新しい煙草を取り出そうとしたが、箱の中は空。



「ついてないな····」


そんな声を漏らしながら喫煙所を出ようとすると、フードを被った人も動き出す


タイミングさえもついてないのか


自分のツキのなさに落ち込みながら
占い番組でも確認しておけばよかったと思った。


早く喫煙所を出ないかと待機していると、その人はクルリと体の向きを変えて私を見つめた。



「な、なにか·····?」



「お姉さんこれあげる」



少し怯えながら声を返すと

その人は私に手を伸ばして1本の煙草を渡してきた


普通なら断るが、この人の場合は断ることの方が怖くて
私はペコペコしながら煙草を受け取った。



「同じ銘柄じゃなくてごめんね」



「いえ、ありがとうございます·····」



「お姉さんの名前は?」



「理佐···」



「へえ、うちは愛佳!よろしく」



名前を教えてもらい、ようやく女性だということがわかった

声と顔だけじゃ判断できなかったから。


愛佳さんは名前を言って笑顔で手を伸ばす

もう二度と会うことは無いだろうが
一様 愛佳さんが伸ばした手を、私は苦笑いしながら握った。



「理佐は20歳を超えてるの?」



「当たり前ですよ、愛佳さんだってそうでしょう?」


「プッ·····  アハハッ    」



 
愛佳さんがした質問の意図が分からなかった

煙草を吸っているのだから、超えていなければ捕まってしまう。


けど彼女は私の返しに頷かずに、笑いだしたのだ






そしてようやく気づいた





この人が未成年だということに·····