久しぶりにBLを読みました。
そしてすごく良かったので、感想を書きにきてみました。
四年ぶりですかね…
その間本当にBLから離れていて、びっくりするくらい大丈夫でした。
無ければ無いで良いみたい…

 

今回読ませていただいたのは
樋口美沙緒さんのパブリックスクール(全三巻)という作品です。

 

何は無くとも、寮生活!!

 

という嗜好がありまして…
タイトルからして惹きつけられましたね。
友人のご厚意で借りて読みました。

 

樋口さんの作品は多分、「ぼうやもっと鏡みて」というのが初読みであったかと思います。
デビューしてすぐのあたりですかね…?
その頃、花丸文庫が新人さん(しかも有望で優秀な)を勢い良く輩出していたように記憶しています。
いまではその作家さんがたが、色んなレーベルの看板作家として活躍している様に感じます。
感慨深いものです。


さて、パブリックスクールです。

狭い世界が全ての閉じられた物語です。
その中でどのような渦巻く愛憎劇が待ち受けているのでしょう。
久しぶりの感覚にわくわくしました。

 

30ページくらいで、物凄い充実を感じました。
BLに接していなかった間についぞ感じたことのない充足で、驚きを隠せません。
私が本当に愛すべきものはやっぱりこの世界観なのだ…。

 

受のレイは12で天涯孤独になり、会ったこともない父親を頼りにイギリスへ単身渡ります。

 

そこで待ち受けていたのは、冷たい親戚と父親の死。
独りになりたくないと一縷の望みをかけて国を渡っても、レイはやっぱり孤独なのでした。

 

そんな中、冷たく当たりつつも芯は優しいと感じる義兄エドワードにレイは心を開きます。
そして開いた心は何度無理やり閉じられそうになっても、最後まで開き続けるのでした。

 

レイの惜しみない愛を受け、これまた孤独だったエドワードは乾いた土に水をやるように、深く受け止め慈しんでしまいます。

 

その深さゆえ、すれ違う二人の関係に読者は固唾をのみ、黙って居られずああ、もう!などと声が出、はたまた枕に突っ伏してジタバタするのではないでしょうか?
私はしました。

 

もうぶっちゃけ、エドワードが私の好きすぎる攻でした(感想終わり)
というくらいの攻でして。

 

冷たさと聡明さと不器用さがほぼの中に、優しさが少し混じっているという絶妙なバランス。
優しさがほんのり感じる孤独な王様。どこまでも先を読み、己を律する暴君。

 

好きすぎる。

 

あまりにも私の理想とするエドワードの行動に笑いが込み上げ、本を投げ出さんばかりでした。
場面は可哀そうを通り越して酷いというのに…。

 

ワハハこれこれっ!

四年も読んでいないとこうなるのであった。

 

中盤、エドワードの圧力により殻に閉じ込められ、下を向くしかなかったレイが自立に目覚めはじめます。
私はここの流れがとても好きです。
友人が出来、好きなことを学び、自由に笑えるレイになっていくことが。

 

これに伴い、鬱屈していくエドワードとの対比が鮮やかで彼が何を考えているのか、おぼろげに見えてきて聡明すぎるのも逆に足枷なのかもしれないなぁと感じました。
もっと鈍感で、後先を考えずにレイの手を取れていたら。
ふたりはどうなってたんでしょうか。
それはそれで、苦労の連続だろうなと思ってしまうのです。

その苦労も乗り越えていきそうな二人、とも思うけれど…


この作品の凄い所は、エドワードがレイに対して素直になれないという理由付けが、見事だったという所です。

 

身分違いという作品は王道として沢山読んできましたが、庶民視点での価値観の相違、人間関係の複雑さ、階級制度へ飛び込む憂慮などはよく描かれています。
そして、その心理描写は手に取るように共感ができます。

 

が。

 

この作品は、レイを通してそれを書きつつも、その大変な世界へ巻き込んでしまう、苦労をさせてしまう、苦労の先に愛が憎悪に変わってしまう絶望をエドワードに背負わせている。

 

孤独な権力者は、孤独な弱小者よりがんじがらめだという話になってゆく過程が

 

素晴らしすぎた。

 

エドワード視点のクリスマス短編を読み終わった時に、濃厚な愛の理由を知れて心が重くなった。
レイはエドワードをこれから支えていけるのかと思ったりした。
そんな杞憂は、表題作へと持ち越され、ズタボロに涙した。

 

友人より、仕事より、何より俺を優先しろ

 

という言葉を吐きつつ、慟哭するエドワードが心底切なかった。
こんな事を言われて、はい、わかりましたなんて素直に頷けるひといねーよ。ってエドワードが一番分かっている。
分かっているけれど、自分を取り巻く環境がそう言わせてしまう。
それをレイに強いらせてしまう事に最後まで苦悩したエドワードに泣けた。
そんなことが、恋に落ちてまで想像できてしまう頭の良さが不幸だよ…エドワード…。

 

要するに、徹頭徹尾エドワード贔屓のわたし。


そんなエドワードを全部受け入れたレイに感謝をするしかないのであった。

生まれた階級が違っていても、優しい心は誰にでも育むことができるのだと思った作品でした。

 

さて、この作品。

2017年度このBL!の小説部門第一位だったんですね。
そりゃーーー泣けるわーーーー。

 

漫画第一位が憂鬱な朝って、どっちも
身分違いの恋
じゃねーか…王道万歳!

憂鬱な朝もどうなってんだろうなぁ。二巻までしか読んでないや…。

 

それでは、また心打つ作品に出合えましたら、感想書きにきます。