お誕生日おめでとう&ハッピーメリークリスマース♪
2023年キョコ誕、お届けいたします!!(*^▽^*)
両片想いでも、両想いでも、二人が幸せであってくれたらファンとしてはそれが一番嬉しいですね。
2023年祝キョコ誕・ソリのカネのネ
■ 橇の鐘の音 ■
星の瞬きなど一切届いていなかった。
明度の薄い間接照明だけが頼りの寝室のベッドの上、細い身体を真綿でくるむように抱き締めながら、己の内で高鳴り続ける鼓動は無きものとしていた。
「・・寒くない?」
「暖房も入っていますし・・・」
俺に抱きしめられてるし?
なんて言葉にならないその続きを勝手に自分で作り上げ、たった数枚の衣服の砦さえ煩わしく思えて、顔や首元と同じように赤く染まった紅葉のような彼女の右手を自分の左手で包んだ。
恋しくて
愛しくて
大切で
守りたくて
この子に対して思うところは本当に色々あるけれど
いま自分の思考を最も強く支配しているのは『モガミ キョーコ』が欲しい、ただそれだけだった。
思い返せばずいぶん遠くまで来た気がする。
この部屋にこの子が足を踏み入れたのはこれで3回。
初めては俺が風邪を引いたときに、俺の看病のためだった。
二度目は芝居の一環で、君は美月で俺は嘉月で。
そして今日がめでたい3回目。まさかこれほどまで強く焦がれて君に向き合うことになろうとは。
いくら天然思考のこの子でも、さすがにこれから何が起ころうとしてるのかは理解しているに違いない。
肩はガチガチ
顔は真っ赤で
こっちを見ようともしていないその態度でまるわかり。
それでも、抵抗されたら止められる自信はあるんだ。
いやだと言ったら止められる。
たぶん、きっと、おそらくは。泣かれたりすれば確実に・・・。
「・・・キ・・っ・・・」
キョーコちゃん、と呼びそうになって思わず息を飲みこんだ。
駄目だ。いまキョーコちゃん呼びなんてしたらクオンに戻ってしまう。でもそれはまだ駄目なのだ。
けれどだからと言って最上さん呼びにもしたくない。
一歩でも半歩でも近くに俺がいたいから。
常にいつも自分だけが、よりこの子の近くに。
「キョーコ・・・」
だというのにふと不破の顔が浮かんだのはなぜなのか。思わず低い声が出た。
瞬間、ビクリと肩を揺らした彼女は何を感じ取ったのだろう。耐え切れなくなったかの如く固く瞼を閉ざし、細く息を吐き出しても彼女は身じろぎすらせず俺の腕の中にいた。
たまらず恋しい頬に口づけると、か細い声が聞こえた。
「・・・・・いいですか?」
ん?
「いま何て?」
「・・・るがさんは・・みなんですよね」
「うん?」
「でも私は・・・・めてだから・・・」
それはいつものこの子からは想像できないほど小さな声音で。
いま俺とこうしているのがどうしようもないほど照れくさいのだろうか、それとも現在の状況に恐ろしく戸惑っているのだろうか、と勘繰った。
再び口づけを落とし、熱を持った小さな頬を何度も親指で撫で上げ、彼女の耳元に口を寄せると温かい額が俺の喉に触れた。
「ごめん。もう少し声を大きくしてくれる?」
「敦賀さんは、こんなの慣れ過ぎていらっしゃるんでしょうけどっ・・・ッッッ・・!!」
そこで詰まってしまった続きの言葉は訊かずとも察せた気がした。
確かにそう。経験自体は数え切れないほどしてきたし、相手から求められたときだけじゃなく、欲が高まって自分から求めたこともゼロじゃない。
でもそれは、その時その時の『彼女』たちが自分の『彼女』だったからであって、『自分の彼女』という立場でなければそんな事態には至らなかった相手でしかないのだ。
何もかもが君とは違う。
その気持ちを、想いを、考えを、どう言葉にすればちゃんと伝わるのかが分からなくて、それまで優しく包んでいた細い肩を目一杯だきしめた。
伝わればいいのに。思いのままに抱きしめるだけでこの想いが伝われば・・・。
ただ君が好きで、可愛くて、大切で
なのにどこまでも聖い君を欲している自分の欲望を前にして、いま君の中にあるはずの俺に対する愛情がほんの少しでも目減りしたらどうしよう、霧散してしまったらどうしよう。そんな惑いも浮かんでくる。
もし、もしもそうなったらいっそ
俺が今出来うる限りの愛撫を施せば何とかならないだろうか。いや、それはどうも違う気がする。
伝えるんだ。なんとかこの想いを。いま頑張らなくていつ頑張るというのか。
「慣れてなんていないよ?」
「はぁ?なんでそんな」
「本当だよ。俺の知り合いにクリスマスが誕生日なのは君だけだし。さっきケーキを食べる前にも言ったけど改めて。お誕生日おめでとう、最上キョーコさん」
「・・っ・・ありがとう、ございます・・?」
「それで、ね・・」
「はい」
「これから何度クリスマスを迎えようとも俺はもうツリーの下なんて探さないし、靴下とかどうでもいいし、雪とか煌めくネオンとかより、ただ君だけが側にいてくれればそれでいいと思ってるんだ。だから」
「はい?」
「クリスマスプレゼントに君が欲しい。そして君へのバースディプレゼントとして俺を受け取ってくれないか?」
ぎゅうぅぅぅぅ・・・と、今度は音が出そうなほど強く抱きしめてしまった。
白状すると、この時ほど心臓が奇怪な鼓動を打ち鳴らしたことはなかった。
一秒、二秒、三秒と、無言の時間が恐ろしいほど長く感じた。それこそ、永遠に続くような気さえするほど。
「・・・・・ぷっ・・。敦賀さん、いますごい鼓動が早いです」
抱きしめていたぶん近づいて、どうやら丸聞こえだったらしい。
「すごい、私と同じくらい?ううん、それよりすごいかも?」
「当たり前だよ。いま俺がどれだけ勇気を振り絞っていると思ってるんだ」
天然聖らガールの君に向かって。
「えぇぇ、絞っていたんですか?全然、こんなの慣れているはずでしょうに?」
「慣れてないってさっき言ったばかりだろう。こんな経験、初めてなのに」
「はぁ?いくら何でも初めてのはずがないですよね?敦賀さんは経験済みのはず!!」
初めてだよ!恋をしたのは。
君が俺の初恋なんだから。
「真偽なんてどうでもいい。そんなことより、了解が欲しい」
「はい?」
「君が欲しい。代わりに俺をあげるから」
「・・え・・・っと・・っっっ」
ごめん。言い訳に聞こえるかもだけど、君のヨシを聞く前に俺の口が君の呼吸を奪ったのは、ただ勝手に身体が動いてしまっただけで、決して狙っていたわけじゃないんだ。
それでも、抵抗されたら止める気だった。本当にそのつもりでいた。
けれど彼女の腕も身体も唇も、拒否を示すことはなく。
だからってわけじゃないと思うけど、このあと自分でもびっくりするほど素早くこの子の着衣を剥ぎ取って、俺ってば追い剥ぎの才能があるのかも、とふと思った。
最も、最上キョーコ専門の、だけど。
「・・・るがさん・・っ」
「うん?」
「・・みませ・・・うご・・・」
「うご?」
「動き方がわかりません・・・」
「分からなくていいから。むしろ分かっていられたら切なすぎる」
「え?あうっ、う・・・あっ・・・でもぉ・・お・・」
「辛かったら言って。苦しかったら訴えて。出来る限りのことはするから、無理そうだと思ったら我慢しないでいいから」
「・・ハ・・・イ・・・」
でも、出来れば最後まで受け入れて欲しい。
「ごめん。なるべく痛い思いをさせないようにするから。無理かもしれないけど」
「・・ん、へぃき・・です」
痛い思いならこれまでにも散々してきたんで、一つぐらい増えたって。
そんな告白が聞こえてきて、震えている肌を味わう舌の動きがゆるんだ。
それは、あいつから恋心を痛めつけられたりしたことだろうか。それとも、あの母親から親子の情を否定されたりしたことだろうか。
もしくは骨を折ったり、筋肉痛になったりしたことだろうか。
俺がこれから君に与えようとしている痛みは、君をどう変えてしまうだろう。
せめて明るい未来に繋がっていて欲しいと願う・・・・。
「・・・キョーコ・・・ちゃん?」
「・・・うっ・・ぅぅう・・ハイ・・・」
思い切り顰められる額の皺を見下ろしながら
俺は顎の先から流れ落ちる自分の汗をぬぐうこともせず
こころのままに、くちにした。
「愛してる」
この言葉を
まさかこんな気持ちで口にする日が、自分に来るとは思ってもいなかった。
ただ愛しくて
大切で
何物にも代えがたくて
手放したくないのはこの子だけ
この子が喜ぶだろうと、せっかくリビングに大きなツリーを飾ったというのに、まさか今夜こんなことになるとは想像すらしておらず、寝室にクリスマスの飾りなど一つもなかった。
それでも今夜は特別だ。
常だったら聞くことなど出来ない、切れ切れの彼女の呼吸や、感極まって漏れる色を含んだ吐息と微かな涙声。そして時を追うごとに深まってゆく濃い水音が、幸福感と共に寝室を支配してゆく。
「・・っ・・・つるがさ・・・ふ・・・ぅん・・・んっ・・あっ・・・」
もう、どうしてくれようか。
しつこく攻める俺の指に翻弄され、頭を揺らす彼女の動きが尊すぎる。
つい意地悪く耳元で尋ねたくなる一つのセリフを俺は何度も呑み込んだ。
たぶん、口にしたが最後なんだ。彼女は羞恥の限界を超え、俺は色々飛び越えてしまうと分かるから。
ねぇ、気持ちいい?
だめだ、封印しなければ。少なくとも今夜に限っては。
たぶん、そのうち我慢することなく囁くことが出来るようになる日が来る。それまでの辛抱だと思おう。
そう・・・・誓っていたはずなのに。
時間をかけて愛で過ぎてしまったせいでキョーコを抱き潰してしまった。
力なく横たわったまま目を開けなくなってしまったキョーコを見下ろし、俺は大反省することに。
清らかな白いシーツには捧げさせた感が強い赤色の染み。
そのクリスマスカラーは愛と寛大さそのものにしか見えず、これでコンタクトを外したら、白・赤・緑とクリスマスカラーが綺麗に揃うな、と考えて笑ってしまった。
「ごめん。結局ムリさせてしまって」
華奢な身体を手早く拭い、敢えて素肌のまま彼女を抱き寄せ二人で寝具に身を沈める。
彼女の肩にすっぽりと毛布を掛け、穏やかな寝息を子守唄にしようと瞼を閉ざすと、どこからか橇の鐘の音が聞こえた気がした。
ツリーの下は探さない
プレゼントの袋は用意しない
ロマンを演出するだろう雪やネオンにこだわるより
ただ君がいてくれたら
キョーコが俺の隣にいてくれればそれでいい。
最高に幸せになれた今夜
彼女にとっても最高に幸せなバースデイだったと思ってもらえますように。
心の底から祈った。
END
ハイ、そうです!単にイチャベタさせたかっただけのお話です。
しかもキョコ誕なのに蓮くんの方が幸せそうなのもいつものこと(笑)BGMはマライア様!♡
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