たまにはまじめなことも書こうかと(笑)ピカチュウ

今日、なにげなくYahooニュースをみてたら、どうやら、JALはアメリカンに提携先を決定するようですね。

個人的にはマイレージの保護(まぁパーにならなかっただけマシ)がされればそれ以上の関心もないのですが、、、、ピカー音譜

↓ニュースのリンク
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100208dde007020052000c.html

記事の中にあります、「米国独占禁止法の適用除外の申請」(ATI)とありますが、これは、「Anti-Trust Immunity」のことであります。

疑問1.独禁法の適用除外の申請とはなにか?

独占禁止法の適用除外というのは、文字通り、「独占禁止法による訴追からの免除」ともいいかえられます。

この申請が認められるか、認められないか、というのは私は関係者ではないので憶測でものは言えませんが、少なくとも簡単ではない、と思います。

というのも、アメリカでは日本と異なり、独占禁止法の訴追から逃れられる産業や状況などは、相当例外的なものなのです。

参考までに日本で適用除外される業種とか業態って結構おおいんですよね。 
伝統的に日本だと、●●業法と呼ばれる特定の産業を規制(保護?)する法律がありまして、それら丸ごと適用除外なんっていうこともあります。

(海運、損害保険、新聞や書籍などの再販制度、中小企業の不況カルテルなどなど。公取の実際の運営はわかりませんが、適用除外で問題ないにしても、「念のため」新たな水平的競争制限行為をする場合は事前に知らせてると思いますね。)


でも、アメリカでは、一部のプロスポーツとか、農業関係の団体とか、新聞の一定の業態とか、ごく例外的です

日本の弁護士会とか医師会とかはアメリカの独禁法なら一瞬で独禁法違反ですね(笑)
 ※判例上、「政府の競争制限行為への介入を独禁法違反の言い訳にできない」というものがありますので。。。

ヨーロッパもこれほどではないと思いますが、まぁ、日本ほど多くはないかと。

無論、航空機産業も例外ではありません。たとえ、国際航空業界であったとしても、です。

私達もマスコミやら旅行先やらで見る、「スターアライアンス」(日本だとANA)とか、「One World」(日本だとJAL)とかのAirline Allianceも、航空旅客輸送業の水平的な競争制限の動きであるので、独禁法違反である、と断罪する余地が出てきてしまいます。(もちろんEUとか他の国でも)

Airline Allianceに入っていない業者を排他することになるので。

そこで彼らはAirline Alliancesを作る段になって、各国の独禁当局に、「水平的競争制限行為をするけれども、この業務提携は決して競争を阻害するものではないので、独禁法で訴追するのは勘弁してください」という申請を行います。これがATI申請です。

では、疑問2.

なんでこれが今、JALとAmericanで問題になっているのか?

です。

そう、すでに、JALとAmericanはOne Worldのメンバーであって、メンバー内のグループの間で共同運航を行ったり、スケジュールを調整したりすること(競争制限行為とみなされる)については、既に、米国運輸省(航空機産業の担当官庁)にJALがメンバーになるときに既に申請しているはずです
(もちろん日本の当局にも出しているはず)

これを今、あらためて提出する?っていうのはなぜかなぁって思うと。。。はてなマーク


それはちょっと時計の針を去年2009年12月に戻します

12月12日にDCで行われた会議で、日米オープンスカイ協定というのができまして、これが2010年に発行される予定です。
このオープンスカイ協定によりまして、日米の航空機会社は、自社が提携する相手の国の会社との間の協議だけで、本来政府間で決定されていた、発着枠などの調整ができることになります。

本件については、どうも成田における米国便の発着枠の既得権益を低減させるということばかりが日本の報道には多く取り上げられていたようですが、それだけでなく、日米の航空会社による包括的業務提携が可能になります。

(具体的に言うと、JALとアメリカンとの合意だけで、羽田とJFKの国際便を飛ばせるということになります)

↓国交省のプレスリリース
http://www.mlit.go.jp/report/press/cab03_hh_000106.html

このプレスリリースを読むと、「今般の実質合意を受け、航空企業間の包括的業務提携に関心を有する日米両国の航空企業は、上記提携に必要となる独占禁止法適用除外(ATI)取得に向けた手続きを開始することとなる。」とあります。

よって、JALがこのオープンスカイ協定に基づいて新たな競争制限行為(発着枠の調整とか共同運航とか価格調整とか)を行うのであれば、改めて、担当官庁である米国運輸省あてに、米国独占禁止法からの訴追免除を申し立てしないといけないです。(米国政府内の手続きはわかりませんが、おそらく米国運輸省から司法当局にFileされると思います。)

そう、すなわち、これに基づく申し立てを一緒に行う相手が、次の、JALの提携先となりますエルモ

これが、今回、アメリカンである、という報道なので、すなわち、JALは引き続きアメリカンと提携、ひいては、One Worldにも残留するということを意味します。

あんまり航空関係に詳しくは無い中でつらつら書いているのガクリで事実誤認があるかもですが、整理のため書いてみましたピカチュウメモ

(追記)
毎日の記事中に「デルタと組むとATI申請が認められない可能性があるからデルタとの連携はやめた」と読める文章がありますが、認められるかられないかはわかりません。日米路線だけに、競争が行われる市場規模の照準をあてるなら、デルタが過度な独占状態になってしまうため、そういえるかもしれませんが、市場規模を世界全体にするとそうもいえないし。どういう判断基準を適用するかは、司法当局の裁量なのでこればっかりはなんともいえません。