渇水 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

渇水

68点

生田斗真主演。かなり重めの、そして誰にでも降りかかる可能性がある興味深い人間ドラマ。
水道局員の岩切(生田)は、水道料金を滞納している家を回り「停水執行」を行うのが仕事。行く先々でトラブルに遭遇する展開。
業務遂行の過程で、岩切は育児放棄された小学生姉妹2人と出会う。基本的にこの姉妹とのやり取りが映画の軸。特に姉の方がいい味出してる。
さて主人公・岩切だが、貧乏で料金が払えない人はともかく、お金はあるのに払ってくれない人もいて、身勝手な理由を押し付けられ辟易する。彼自身もプライベートでは妻や子供と上手くいっておらず、葛藤する日々を送る。

そこはあくまで岩切というか生田斗真が中心で、「停水執行」という独特な仕事を通じどこか無理に泣かせにかかってる印象があった。ようは予定調和の物語なんだな。主人公ありきの構成。うーん生田くんファンには良い映画かもしれないが、好きでも嫌いでもない人が見ると鼻につく部分は多いかも。

電気やガスは料金払わないと自動的に止まるが、水道は基本的人権に関わるためなかなか止まらない、という話は聞いたことがあるけれど、止める側のドラマを感動的に作るとこうなる、みたいな作品。なるほど今まで見たことのない個性的な映画なので、最初に書いた通り興味深いテーマではある。

ちなみに原作は救いのない絶望的な終わり方をしているが、映画版はそこをガラッと変え、望みを託したエンディングになっている。小説を読んで暗~くなった方は安心して見て大丈夫。

しかし本作、かなり骨太のテーマのわりに意外と心に残らなかったのは、主演・生田斗真を持ち上げすぎの過剰演出が目についたからかもしれない。

監督:高橋正弥
出演:生田斗真、磯村勇斗、山崎七海、柚穂、門脇麦、宮藤官九郎、尾野真千子
2023年  100分