☆テツコの部屋☆~映画評論館~

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ゴジラ×コング 新たなる帝国

78点

2021年公開『ゴジラvsコング』の続編。「モンスター・ヴァース」シリーズの5作目となる。
ストーリーは意外と後半の物語が濃厚だが、前作までは特に見なくても十分楽しめる。まぁもちろん見ておいた方がいいけど。
映像は終始派手で、期待通りの怪獣プロレスが繰り広げられるのが特色。
例えば2023年に公開され大ヒットした日本製作『ゴジラ-1.0』では戦後の人間臭い物語を描いたが、本作は2027年の地球が舞台。
太古から受け継がれている文明、古代怪獣やグレイトエイプ、果てはモスラまで登場する賑やかさは問答無用で楽しい。
しかし人間が出てきてチマチマ進展すると一気に盛り下がるのは相変わらず。シリーズ進む上でそこそこ尺を取ってきているストーリーの奥深さは、逆に少しウザく感じた。面倒だからゴジラやコングらのバトルだけでいいじゃん、と思った人も多いのでは。
完璧なCGと思いきや、わりとアラも目立つのはご愛敬。ドンパチやっていても突っ込み所はしばしばあるが、そこは黙認。
なんだかんだ見終わったあとは、まぁまぁ面白かったとそれなりに満足なのはこの手のハリウッドSFアクションの良いところかな。しかし製作費200億円以上も金かけてつまんなかったらそれはまずいが(笑)。

監督:アダム・ウィンガード
出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーヴンス、カイリー・ホットル
2024年  115分
原題:Godzilla x Kong: The New Empire

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章

87点

2014年~2022年までビックコミックスピリッツで連載されていた漫画を劇場版長編アニメ化。
3年前に東京に突如現れた巨大な未確認飛行物体。その宇宙船が上空に浮いたままの状態が、普通に日常となった現在の女子高生たちの青春劇を描く。
冒頭から実に個性的。声優もYOASOBIの幾田りら、あのちゃん、入野自由らを起用し、前後章2部作の大作となっている。
とりあえず何の予備知識もないまま前章を見る限り、ストーリーもとにかく一筋縄ではいかない。巨大宇宙船は決して物語の核ではなく、あまり可愛くないが個性的な登場人物の過去の軋轢や、空から落ちてくるたくさんの小さな侵略者、無駄に暴力的な自衛隊など、映像も内容も衝撃な展開。宮崎アニメでいう『ハウルの動く城』と新海誠の『天気の子』を合わせ、刺激的な描写を増やしたような作品。

アニメといえどそこは決してティーン向けのわかりやすいものではなく、奥が深くて正直難解な部分もあるが、これはハマると抜け出せない麻薬的な魅力も兼ね備えてる印象。多少なりとも興味があって映画館に足を運んだ人なら、そのクオリティの高さに驚いた人も多いと思う。
タイトルにも象徴される独特な世界観。2部作だし見ようかどうか迷ったがここは見て大正解。ただし興味ない人におすすめはしない。この異常な日常にどっぷり入り込めるマニアだけの世界。後章が楽しみ。

監督:黒川智之
声の出演:幾田りら、あの、入野自由、島袋美由利、大木咲絵子
2024年  120分

毒娘

57点

原作はネットの掲示板で話題になった都市伝説。後に週間ヤングマガジンの漫画とこの映画がコラボしている。

謎の少女「ちーちゃん」が出没し家族に危害を加える展開。予告を見る限りホラーだが、本編を見ると何やら様々な要素が絡み合い、正直よくわからない作品。
主人公の主婦(佐津川愛美)は夫と娘と3人暮らし。そこへ突然不法侵入して娘を襲うちーちゃん。

このちーちゃんのインパクトは最強・・・かと思いきや、よく見ると普通の可愛い18歳くらいの女の子。その辺のキャラ作りはやはり邦画だと甘くなってしまう印象。
全体的にストーリーはあまりよく練られておらず、行き当たりばったりなのは否めない。ただ逆にそこで意外と不気味さが出ているのは怪我の功名。突っ込み所も満載だけどそこは欠点と思わず、特徴と思えば楽しむことができそう。よくわかんないけど怖いぞ!みたいな。
前半のちーちゃんは、理不尽に殺人鬼ジェイソンのような存在かと思わせるも、実はこれミスリード。真相は襲われる側の家庭にも問題があるという展開で、後半は意外な方向にシフトチェンジする。その辺純然たるホラーではない一筋縄ではいかないストーリー。
うーん、とは言っても全体像は支離滅裂で意味も伝わりづらく、特にどんでん返しもなく見終わったあとは面白くないと言われそうなクオリティ。

もっとも個性は抜群で、個人的にどこか捨てがたい作品でもあるんだな。ではもう1回見る?と言われてもおそらく2度と見ないと思うけど(笑)

監督:内藤瑛亮
出演:佐津川愛美、植原星空、伊礼姫奈、竹財輝之助、馬渕英里何
2024年  105分

オーメン・ザ・ファースト

61点
1976年公開の名ホラー『オーメン』の前日譚となる物語を2024年に公開。
悪魔の子・ダミアンの誕生をめぐる攻防となるが、まぁ前日譚なのでダミアンが無事に生まれることはわかっているのがこの手の作品の弱点。
さて今回は、派手な映像で怖がらせると言うよりはあくまでストーリー勝負。初代名作『オーメン』の隅から隅までを熟知し、徹底的にリスペクトし掘り下げている印象。なので昔の『オーメン』を見てない人には本作の凄さは今一つ伝わってこないと思う。
しかし「凄い」からと言って面白いとは限らないわけで、カソリック協会の失墜と反キリストに絡んでいく修道女の複雑な展開は、よほどオーメンマニアでもない限りなかなかすんなり入ることは難しそう。
例の音楽はファンの恐怖心を煽る秀逸な演出。けど劇場公開作品なのに、グロい場面にボカシが入ってるのがズッコケる。ボカシ無しだとR-15になっちゃうからかもしれんけど、そもそも小中学生はこの映画見ないでしょ(笑)。金払ってるんだからそこはオリジナル映像で見せてよ。
完成度は高いものの、怖さを追求したホラー作品としては詰めが甘い。『エクソシスト』もそうだったけど、過去の名作を復活させたわりにイマイチ感が漂いすぎ。技術は進歩してるのに、今の時代の映画屋は腕が落ちたなと言われても仕方ないクオリティ。

監督:アルカシャ・スティーヴンソン
出演:ネル・タイガー・フリー、ビル・ナイ、ソニア・ブラガ、ラルフ・アイネソン
2024年  120分
原題:The First Omen

ゴーストバスターズ/フローズン・サマー

66点
2022年に公開された『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の続編。シリーズ5作目だが、2016年公開のリブート作『ゴーストバスターズ』が不評によりなかった事にされたため、本作は実質4作目扱いになっている。

さて今回は前作のキャストがほぼ続投しており、新たにシリーズ化する気満々の内容。ただ残念ながら二番煎じは拭えず、インパクトも前作に比べるとかなり劣る印象。
敵は最強の寒波を武器とする邪神ガラッカ。またも40年前のキャラも引っ張り出して大風呂敷を広げるも、やっぱりそこそこ面白かった前作の直後なだけに、残念感は否めない。
派手な映像は今の時代CGを使えばいくらでも作れるだけに、その幽霊軍団の賑やかさだけでは限界があるのを露呈してしまった。ビル・マーレイやダン・エイクロイドもいい加減無駄遣いすぎ。前作から登場したお馴染みのキャストもそれほど魅力的とは思えず、今の時代に新しい要素を作り上げるのはやはり至難の業なのかと感じてしまう。
それでも題材としては人気作品にそれなりの製作費をかけてるので、そこそこ楽しい映画にはなっているものの、期待値が高かっただけにそこを下回る出来なのは仕方ないかもしれない。次作の発表はまだされていないけど、ここで打ち切りの可能性大と予想。
あと日本語版の声優にチョコレートプラネットや本田真凛を起用してるが、さすがに声優業とはまるで関係ない事務所都合のタレントのゴリ推しはやめてほしい。

監督:ギル・キーナン
出演:ポール・ラッド、キャリー・クーン、フィン・ウルフハード、マッケナ・グレイス、クメイル・ナンジアニ、ダン・エイクロイド、ビル・マーレイ、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツ
2024年  115分
原題:Ghostbusters: Frozen Empire


 

オッペンハイマー

55点

原子爆弾の開発に多大なる功績を残し「原爆の父」と呼ばれたロバート・オッペンハイマーの半生を描き、物議をかもした問題作。

本作の全米公開は2023年7月。アメリカのみならず全世界で大ヒットしたが、内容が原爆なだけに日本公開が見送られ、結局2024年3月にようやく公開という経緯。
監督は『ダークナイト』の3部作や『インターステラー』『インセプション』などでお馴染み現代映画界ナンバーワンの呼び声高いクリストファー・ノーラン。アカデミー賞でも今回は作品賞、監督賞をはじめ7部門に輝いた。ノーラン作品が危うく日本公開されないという事態は避けられて、とりあえず一安心って人も多いはず。

さて肝心の内容だけど、ぶっちゃけ思ったような面白さ、というか興味深いものではなかった。
最初の1時間はオッペンハイマーの女性関係。これは終盤の伏線になってるんだけど、エロいシーンも多く正直無駄に思えた。本作がR-15になってるのは実はこのためで、原爆投下での悲惨なシーンはほぼ描かれていない。

もともとナチスドイツを撤退させるための開発だった原爆も、ヒットラーが意外と早く失脚してしまったために、矛先は日本に向いてしまった。ただ広島・長崎の惨状も本作では全く出てこず。そこの描写が少なすぎることが逆に日本公開が遅れた理由とも言われている。
英雄から反逆者へと堕ちてしまうオッペンハイマー。しかし3時間もある割にそこは上手く表現されたとは思えなかった。終始暗そうな顔をしていたオッペンハイマー演じるキリアン・マーフィだけど、特に驚くべき事実が明かされるわけでもなく、映画としては凡作になってしまったのは否めない。
そうなるとやっぱりこの作品は史実を熟知している知的な人向けなのかな、と感じた。俺みたいな頭悪い人はもっと能天気な映画見た方がいいのかと自問自答してみたり(笑)

監督:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、ラミ・マレック、ジョシュ・ハートネット、フローレンス・ピュー、ケイシー・アフレック、ケネス・ブラナー、トム・コンティ
2023年  180分
原題:Oppenheimer

変な家

51点

今週の映画ランキングで、ホラーにしては珍しく1位になった作品。出演者が妙に豪華で内容に合っていたのと、意味ありげで面白そうなタイトルが要因かな。ただ結論から言うとあまり面白くない。
YouTuber(間宮祥太朗)とミステリー愛好家(佐藤二朗)が組んで、都内にある一軒家について調査する展開。内容は「変な家」というより「少し違和感のある間取り」という感じ。調べる過程で、死体遺棄事件と先祖代々の呪い、儀式に行きつく構成。
ミステリーよりもホラーの要素が強いかな。突然大きな音で驚かせたりの演出は古典的だが、ストーリーがそこそこ奥深いのが逆に恐怖感を削いでいる印象。ホラーならホラーともっと攻めてもよかった。
そして終盤、ぞわぞわっと来るような気持ち悪いラストを目指したのかもしれないが、例えば前回紹介した『呪詛』のような完成度には遠く及ばず。近年量産されている粗悪な邦画の域を出ていない。
人気俳優とベテランを融合した味のあるキャストなものの、そこは無駄遣い。いやいやヒットしてるなら無駄遣いではないか(笑)。

監督:石川淳一
出演:間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、長田成哉、DJ松永、瀧本美織、根岸季衣、高嶋政伸、斉藤由貴、石坂浩二

呪詛

86点
劇場公開ではなくNetflixで配信された作品。実話を基にした、台湾史上最も恐ろしいホラー映画という触れ込み。
母親が娘を呪いから助けようとする展開。ベースは『エクソシスト』だが他にも『ポルターガイスト』『リング』『ミッドサマー』あたりに影響を受けている印象。
とりあえず全編、気持ち悪い描写が多い。残虐なグロというよりは、虫とかブツブツとかのゾワゾワ系なので、そういうのが苦手な人は注意。
ストーリーはオーソドックスだがほどよく凝っているので、単調にはなっていない。ただ過去の名作ホラーを彷彿させる場面も多々あり、そこをパクりと思ってしまうとホラー見慣れている人は白けてしまうかもしれない。
しかし全編、視覚的に攻めたと思わせておいて、ラストで突きつける衝撃の事実はなかなか驚いた。内容やスタイルは全く違うが、例えば『リング』のラストでテレビから貞子がゆっくり出てくるような、あの嫌~な気分をもう1度味わったようなそんなエンディング。
台湾映画なので泥臭い部分も多々あるけれど、東アジア特有の背景が妙に恐ろしい映像にマッチしている。登場人物や言語など、日本人とは似て微妙に異なるその雰囲気は、洗練された洋画より不気味さが上かもしれない。

これはなかなか掘り出し物です。

監督:ケヴィン・コー
出演:ツァイ・ガンユエン、ホアン・シンティン、ガオ・インシュアン
2022年  111分
英題:INCANTATION

夜明けのすべて

70点

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で恋人/夫婦役だった松村北斗と上白石萌音の主演作品。
女性はPMS(月経前症候群)で月に1度イライラが抑えられなくなり、男性はパニック障害で気力を失っていた。この2人が職場で出会い、最初は無関心だったが徐々に共感し、心を開いていく展開。
精神的に不安定な男女だけど体自体は健康なので、映画の流れにも悲壮感があまりない。

相手の「内面の病気」に干渉し、いつしかおせっかいを焼くようになり、2人だけでなく周囲の人たちも巻き込みだんだんと暖かい気分になれるところがこの映画の特色。劇中にある「夜明けの直前が一番暗い」というセリフが、本作の内容を一番よく表していると思う。
個人的には朝ドラでこの2人の演技に感動した1人なので期待も大きかったが、題材としてはまずまずの印象。脇役で出ている今売り出し中の俳優やベテラン陣もいい味出しており、ともすれば暗くなりがちなテーマを爽やかにまとめている佳作。感動で涙が流れるようなタイプではないけど、見た後はそれなりに清々しくなれるかな。

まぁただ現実はこう上手くいかないものでもあるので、映画と割り切って見るべし。


監督:三宅唱
出演:松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、宮川一朗太、丘みつ子、りょう、光石研
2024年  119分

落下の解剖学

67点

2023年のカンヌ映画祭最高賞(パルムドール)受賞作品。でも検索すればわかるが、パルムドールってだいたい無名の作品ばかり。本当に最高賞なの?って首をかしげるような作品も獲っている。まぁそもそも映画祭と映画賞ってまるで違うものなのだが、その辺の指摘についてはいずれまた。
さてここはネタバレしてますので注意。

フランスの山奥にある山荘で小説家ヴァンサンが転落死する。嫌疑をかけられた妻サンドラ、現場にいた11歳の盲目の息子ダニエル。裁判で暴露されていく家族の軋轢、という展開。
結果的にこの映画、実は最後まで真相は明らかにならない。裁判で結論が出るだけで、サンドラが本当にやったのかどうかはわからないエンディングになっている。最近こういう丸投げのサスペンス多いよなぁ、という印象。

余韻を残した終わり方が好き、という人もいるようだが、個人的には良い締めが見つからなかったから、曖昧な終わり方に逃げているようにしか見えなかった。
2時間半という長めの時間の中、映画は美しい雪山映像に刺激的な映像(特に犬)を交えて退屈しない構成になっている。当然そこは犯人捜しだけでなく、夫婦間が抱える問題点をあぶり出した人間ドラマに重きを置いているということなんだろうけど、果たして見ている側で真相を知りたくない人いるのかな?って話になってくるわけで。

2017年に数多くの映画賞に輝いた作品『スリー・ビルボード』も、散々煽って真相は結局中途半端に終わらせていたが、近年あらゆる映画がネタ切れの時代なのかなとちょっと残念。

監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ
2023年  152分
英題:Anatomy Of A Fall

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