☆テツコの部屋☆~映画評論館~ -5ページ目

マイ・エレメント

56点

『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』でお馴染みピクサーアニメ。ちなみに監督のピーター・ソーンは韓国系のアメリカ人で見た目は完全にアジア人。
舞台はエレメントシティと呼ばれる街。火、水、土、風と4つのエレメントが住んでおり、主人公は火の娘エンバーと、水の青年ウェイド。

火と水が禁断の恋をして、終盤ドタバタしながらもハッピーエンドという、偉大なるピクサーのワンパターン。
けど下のポスターを見てもらうと少しわかると思うが、とにかく画が今までと違い、フルCGにしては平面的な描写になっている。これは従来のピクサーに慣れてる人だとかなり戸惑いそう。

キャラクターの個性としては『インサイド・ヘッド』を彷彿させた。ストーリーは単純なので、あとはこれら独創的な登場人物にどこまで感情移入できるかが焦点。個人的にはそれほど悪くなかったけど、かと言ってもう一度見たいとは思えず、おそらく2ヵ月くらいたったら綺麗に忘れてそうな気がする、そんな映画。
近年のピクサーはシリーズもの以外あまりヒット作がなく、ここらで1発すごい作品を期待してる人は多いと思うが、果たして今後どうなりますか。

なお『カールじいさんの空飛ぶ家』の続編『カールじいさんのデート』が同時上映。とは言っても長さわずか7分、デートの準備するだけであっと言う間に終わります。ただ死別した奥さんエリーへの愛情もさりげなく描かれているのでそこは見どころ。ファンは見といて損はない。でもカールじいさんのファンってそうそういるのかな(失礼)

監督:ピーター・ソーン
声の出演:リア・ルイス、ママドゥ・アティエ、ロニー・デル・カルメン、シーラ・オンミ、ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ
2023年  101分
原題:Elemental

イノセンツ

64点

ノルウェーを舞台にした、子供たちが主演のホラー作品。団地に住む姉妹と男女2人が仲良くなりこの4人の児童が中心のストーリー。
前半は子供特有の軽い暴力的な行為が顔を出す。虫を殺したり、動物をイジメたり。
中盤以降は子供たちに覚醒する超能力にスポットが当てられ、今度は容赦なく人間を攻撃するようになる。そしていつしか4人組で内輪もめに発展していく。
北欧独特の乾いたような美しい風景。最近だと『ミッドサマー』、ちょっと前だと『ぼくのエリ、200歳の少女』あたりを彷彿させた。この2本はスウェーデン作品だけど、隣のノルウェーなので雰囲気的には似てるのかな。
しかし映画の感想としてはとりあえず、あまり子供たちが可愛く見えなかった。まぁそこは人それぞれかもしれないが、登場人物に魅力が感じられないと、なかなか映画に惹きこまれないんだよなぁ。終盤で顔を出す子供たちによる残虐性も、個人的には幼稚に感じられた。
映像や演出には何とも言えない、綺麗で不気味な空気感をかもし出しており、これはいけるかもと思って見ていたものの、物語が進むごとに、ありえない描写が増える。かと言ってそれほどブチ切れた展開を見せるわけでもない。その辺全体的になんとも中途半端な内容に終わってしまったのが残念。まぁ普通のホラーですな。

監督:エスキル・フォクト
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルバ・ブリンスモ・ラームスタ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、サム・アシュラフ
2023年  117分
原題:The Innocents

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

51点

人気シリーズ5年ぶり7作目。今回は2部作のパート1だが、パート2が例の米俳優組合のストライキのため、公開が遅れるらしい。
さて、個人的にこのシリーズがなぜか苦手で、4作目の『ゴースト・プロトコル』以来見てなかったけれど、11年ぶりに見た本作はやっぱりわかりづらかった。
過去のシリーズを彩ったキャラが数人登場しており、人間関係はとりあえず面倒。アクションは派手で確かに見ごたえあるが、実はほとんど予告で紹介されており、見たことあるシーンが多く新鮮味はなし。

ただトム・クルーズが体を張ってる場面はメイキングがYouTubeで公開されてるので、そこは大スクリーンで見るとより迫力を感じられそう。
ストーリー自体は、人類を脅かすAIの争奪戦みたいな感じで単純明快。けど先にも書いた通り、そこを巡るキャラ同士の思惑や裏切りは、やはり過去作から整理した方が楽しめると思う。ネタバレは避けるが、とある女性キャラがああなってこうなる展開は思い入れがあればあるほど染み入る展開なはず。

しかしやはり2時間40分という長い尺で、ぶっちゃけ地味な部分も長く、ファン以外の思い入れのない人がいきなり見ると、眠くなるパートもけっこう多いのでは。個人的にこのシリーズ苦手な理由が、改めて本作を見て思い出された。

一度嫌な印象を持ってしまうと、ズルズルとシリーズ通して引きずってしまう。例えば自分なら、ワイルドスピードは好きだけどこっちは好きになれない。映画を続けて見てると、理屈じゃなくこういう不思議な好き嫌いってあると思う。いやトム・クルーズは好きなんだけどさ。


監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヴィング・レイムス、ヴァネッサ・カービー、レベッカ・ファーガソン、ヘイリー・アトウェル、サイモン・ベッグ
2023年  163分
原題:Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One

君たちはどう生きるか

79点

同タイトルの小説・漫画が存在するが、原作は無く内容は完全オリジナル。そして事前情報は一切明かさず写真1枚流出しない徹底ぶり。完全に秘密の状態で公開された宮崎アニメの(おそらく)最後の作品。
しかし主題歌に米津玄師、声優はプロではなく木村拓哉、菅田将暉、柴咲コウ、木村佳乃、そしてなぜかあいみょん。この辺を見る限り完全に流行りに寄せており、やっぱり御大もヒットが欲しいのかなぁとゲスい想像をしてみたり。主人公の声は山時聡真なる無名の若手だが、実はこの少年も事務所は菅田将暉が所属してるトップコートなんだよね(笑)
まぁそういう裏事情は無視して感想を言うと、一見してとにかく宮崎駿らしさ満載の作品なのは見た人誰しもが感じたんじゃないかな。


『君たちはどう生きるか』という説教臭いタイトルだけど、内容にはほぼ無関係。冒頭が戦時中なので『風立ちぬ』みたいな反戦テーマかと思いきや、途中からはもうバリバリ宮崎/ジブリ節炸裂のファンタジー作品だった。そこはファンは安心して見に行っていい。
個人的に『千と千尋の神隠し』以降の宮崎アニメは、かなりぶっ飛んだイメージで意味不明な印象が強いが、本作もまさにそれ。これを完璧に説明できる人は皆無だろうし、そこがむしろ特色なんだと思う。
少年がアオサギに導かれ異世界に渡り大冒険を繰り広げる。その辺は最近だと新海誠監督の『すずめの戸締まり』を彷彿させたが、そもそも新海監督が宮崎アニメに影響されてるわけで、そこは一周回って元に戻ってるんだろう。過去のジブリだと『千と千尋の神隠し』や、個人的には『猫の恩返し』を思い出した。
なるほど本作が宮崎駿の集大成といえばそうなんだろうけど、物語としてはっきりとしたメッセージはなく、これが最後と言われてもピンと来ないし、ぶっちゃけエンドロールまで見ても感動して涙を流すようなものでもない。

ただ圧倒的な宮崎ワールドを突き付けられ、これが俺なんだよと往復ビンタ食らったような、そんな作品。だから大して面白くもないし泣けもしないけど、宮崎アニメここにありと見せつけられた「すごさ」は誰しもが感じたと思う。

 

ただジブリ大好きな自分が死んだとき墓まで持っていきたいのはこれじゃなく、やっぱりナウシカ、トトロ、魔女宅あたりなんだな。


監督:宮崎駿
声の出演:山時聡真、菅田将暉、木村拓哉、柴咲コウ、あいみょん、木村佳乃、竹下景子、風吹ジュン、滝沢カレン、國村隼、火野正平、小林薫、大竹しのぶ
2023年  124分

リバー、流れないでよ

66点

『サマータイムマシン・ブルース』『曲がれ!スプーン』などを手掛けた上田誠の戯曲を映画化。ミニシアターランキングで2週連続1位とスマッシュヒットを記録している、知る人ぞ知る注目の作品。
舞台は京都の貴船川ほとりにある老舗旅館。あるとき従業員や宿泊客が全員、時間がループしていることに気付く。2分たったら時間が巻き戻り、2分前の場所からやり直し、その繰り返し。ただし記憶だけは引き継がれているため、登場人物が徐々に慣れてユニークな行動に出たりする展開。ここはネタバレ注意。


まず長所としては、設定と物語が破天荒。自分がこの場にいたら、と思うととにかくワクワクする。実績がある人の原案でさすがの面白さ。
しかし意外と欠点が多いのも事実。まず冒頭、しばらくダルい場面が続き退屈。やっとループが始まってからは盛り上がるものの、結局オチは未来人が乗ったタイムマシンの故障、という一番ありがちなくだらない締め。

中盤が良かっただけに、このラストはガックリきたなぁ。もっと気の利いたエンディング思い浮かばなかったのかな。
キャストは無名の人が多いけれど、その分みんな演技が必死。まるで舞台を見ているような感じで一生懸命さが伝わってくる。ただ有名ベテラン俳優にあるような余裕がなく、そこはどこか見てて安心できないB級の危うさがあった。

例えば同じブレイク作『カメラを止めるな』を見た時は本当に肩すかしでズッコケたけど、こちらはそこまででもなかったかな。ただせっかく題材がいいのに、生かしきれなかったのは残念。SFコメディとしてはあと一歩に思えた。


監督:山口淳太
出演:藤谷理子、永野宗典、角田貴志、酒井善史、本上まなみ、近藤芳正
2023年  86分

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

74点
シリーズ5作目。1作目『レイダース失われたアーク』から実に42年、前作からも15年ぶりとなる続編。
冒頭はいきなりまだ老いてない時代の、CGで復活したインディが暴れる展開。ただこのエピソードが30分くらいあっていきなり間延びする。そして映画は全2時間半そのまま長く感じた。
さて前作で息子役を演じたシャイア・ラブーフが私生活でトラブル連発、おかげで本作では死んだ設定になっている(笑)。そのため基本的に本作は、独立したストーリーのためむしろ新鮮な気持ちで見れるのがいいかもしれない。
敵役のマッツ・ミケルセンは迫力十分。アントニオ・バンデラスも絡んだ豪華なキャストだが、今回の相棒はフィービー・ウォーラー=ブリッジなる大して美人でもない37歳の微妙なおばちゃん(失礼)。なんでハリウッドはいつも活きのいい若い女優使わないかねと思うが、まぁそこは割り切って見るにしても、この女性が魅力不足なのは否めない。


ネタバレは避けるが、映画のクライマックスは前作『クリスタル・スカルの王国』で出てきた宇宙人に匹敵するびっくり展開が待っている。そこは見てのお楽しみだが、個人的にはそのラストの締めを含め、見終わった後はそこそこ満足できた印象。
ただやっぱり本作、『トップガンマーヴェリック』の成功に刺激されたと思うんだけど、ここで完結にしては手放しで「面白かった」とは言えない残念さが誰しも感じたと思う。

ハリソン・フォード自体はもうやらないと明言してるらしいものの、物語としてはまだこの先が作れそうな雰囲気もあり、どこか中途半端になってしまったのは事実。最初の3作がなんだかんだ面白かっただけに、4作目5作目と右肩下がりなのは、CG時代の作り物映像が露骨に出てしまったのも一因としてあると思う。

インディジョーンズはやっぱり主役たちが体を張り、虫やギミックを大量に使った手作り的なところが本物だったんだけどなぁ。


監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、トビー・ジョーンズ、マッツ・ミケルセン
2023年  154分
原題:Indiana Jonesandthe Dial of Destiny

渇水

68点

生田斗真主演。かなり重めの、そして誰にでも降りかかる可能性がある興味深い人間ドラマ。
水道局員の岩切(生田)は、水道料金を滞納している家を回り「停水執行」を行うのが仕事。行く先々でトラブルに遭遇する展開。
業務遂行の過程で、岩切は育児放棄された小学生姉妹2人と出会う。基本的にこの姉妹とのやり取りが映画の軸。特に姉の方がいい味出してる。
さて主人公・岩切だが、貧乏で料金が払えない人はともかく、お金はあるのに払ってくれない人もいて、身勝手な理由を押し付けられ辟易する。彼自身もプライベートでは妻や子供と上手くいっておらず、葛藤する日々を送る。

そこはあくまで岩切というか生田斗真が中心で、「停水執行」という独特な仕事を通じどこか無理に泣かせにかかってる印象があった。ようは予定調和の物語なんだな。主人公ありきの構成。うーん生田くんファンには良い映画かもしれないが、好きでも嫌いでもない人が見ると鼻につく部分は多いかも。

電気やガスは料金払わないと自動的に止まるが、水道は基本的人権に関わるためなかなか止まらない、という話は聞いたことがあるけれど、止める側のドラマを感動的に作るとこうなる、みたいな作品。なるほど今まで見たことのない個性的な映画なので、最初に書いた通り興味深いテーマではある。

ちなみに原作は救いのない絶望的な終わり方をしているが、映画版はそこをガラッと変え、望みを託したエンディングになっている。小説を読んで暗~くなった方は安心して見て大丈夫。

しかし本作、かなり骨太のテーマのわりに意外と心に残らなかったのは、主演・生田斗真を持ち上げすぎの過剰演出が目についたからかもしれない。

監督:高橋正弥
出演:生田斗真、磯村勇斗、山崎七海、柚穂、門脇麦、宮藤官九郎、尾野真千子
2023年  100分

ミーガン

70点
『パラノーマル・アクティビティ』のジェイソン・ブラムと『ソウ』のジェームズ・ワンがタッグを組んで製作し、全米で大ヒットした話題のホラー作。
おもちゃ会社の研究者女性が姪を引き取り2人暮らしする。その姪のために、ミーガンという女の子型のアンドロイドを開発し同居。しかしそのミーガンが暴走する話。
人形が大暴れする展開だと『チャイルド・プレイ』を彷彿させるが、こちらのミーガンは基本的に姪の味方で、いじめっ子や隣家の犬に仕返しをするなどもともと悪意ではないのが特徴。いきなり無差別殺人に走るチャッキーとは根本が違う。

そして終盤あたりは露骨に『ターミネーター』に影響されたと思われる演出。これはオマージュなのかもしれないけど。
予告を見るとわかるが、ミーガンは外見がチャーミングでユニークなダンスも踊ったり、コミカルな要素も多分に含みとにかく魅力的。母親代わりの女性や姪の子役も個性があり、キャスティングは良い。グロ度もほどほどで怖い映画が苦手な人でも楽しめそう。

ただストーリー、というか人間関係が少々面倒で、単純にホラーコメディを楽しみたい人には向いてないかも。前半のテンポも悪く、また見せ場も限られてるため、全編見ると意外と退屈な部分が長い。

けど本作は最初から続編を意識して作っていたようで、次作があるならこの先のストーリーの広がりには期待できる。ジェームズ・ワンは『ソウ』『インシディアス』『死霊館』と一つ当たると長期シリーズにする傾向があるが、この「ミーガン」というキャラならジェイソンやフレディ級に化ける可能性アリ。

ただし本作を単発で見た場合、期待ほど面白くはなかった。

監督:ジェラード・ジョンストーン
出演:アリソン・ウィリアムズ、ヴァイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン
2023年  102分
原題:MΞGAN

リトル・マーメイド(2023)

61点

先週は『怪物』で多様性についてここで書いたけど、実は似たようなテーマがこの『リトル・マーメイド』でも世界的に議論になっている。

『リトル・マーメイド』は人魚姫をモチーフに、1989年に公開されたディズニーアニメ。その後OVAで続編が作られたり、TVシリーズや舞台化されたりもした人気作品だが、今回2023年に実写映画化。
ヒロインの人魚姫・アリエルが、海で溺れたエリック王子を助ける。その後人間界に行き3日以内にキスできればエリックと結ばれる、みたいなベタな流れ。
魔女に喋れなくなる魔法をかけられたアリエル。王子はアリエルの美しい歌声だけを記憶しているため、声が出ないアリエルはいかにエリックの心をつかむのか。ストーリーはなるほど王道で面白い。

ただしこの有名なラブストーリーに、なぜアフリカ系黒人女性をアリエル役に選んだのかが議論されているわけ。


主演ハリー・ベイリーは11歳のとき姉と共に歌った動画をYouTubeに投稿。それがビヨンセの目にとまったとかで、とんとん拍子でデビュー。その後グラミー賞にノミネートされ彗星のごとくディズニー映画に抜擢。そこはまさにシンデレラガール。
まぁただこの映画を見る限り、「歌は上手いがなぜこの子がヒロインやってるのか疑問」という意見はよくわかる。黒人である以前に顔が露骨に魚顔で、主演張るならもっと美人を抜擢しろよと言いたくなるのは正直な意見だろう。一般人のSNSでは辛辣な意見も飛び交っているが、評論家がその辺を公で正直に言えないのもまぁ仕方ない。

前回のブログで「昨今は常に誰かの顔色を伺いながら映画作ってる」とここで書いたけれど、本作もまさにそれだと思う。
そしてこのハリー・ベイリーが主役に選ばれたのは、黒人で歌が上手いという以外に、何か強力なコネを持ってるんだろうなというのは想像に難くない。

ポリコレの嵐が吹きまくってる2020年代の映画界。けど多様性を盾にして正直なキャスティングが封じられてるような気がしてならない。

やっぱり映画って基本的に、誰が見ても美男美女みたいな人が主演やるべきだと思うのよ。

今回は感想を一切書かない感想になってしまいました(笑)

監督:ロブ・マーシャル
出演:ハリー・ベイリー、メリッサ・マッカーシー、ジョナ・ハウアー=キング、ハビエル・バルデム
2023年  135分
原題:The Little Mermaid

怪物

47点

『海街diary』『そして父になる』『万引き家族』などでお馴染み是枝裕和監督作品。

最初に思ったのが、是枝監督が映画作ってカンヌ映画祭に出品したというだけで「名作に決まってる」という風潮がまずウザい。相変わらずひねくれてます(笑)
そしてここはネタバレ注意。

映画は大きく分けて、シングルマザー(安藤サクラ)、担任教師(永山瑛太)、2人の同級生、この3つの視点で描かれている。
同じ場面を複数の視点で繰り返す手法はどこか『桐島、部活やめるってよ』を彷彿させた。映画としてはなかなか興味深い進行。途中まではスクリーンに釘付けになるほど、先が気になる構成だった。こっからネタバレ。

「怪物だ~れだ」とか「豚の脳が入ってる」というこれ見よがしな刺激的なセリフ。う~んでも、残念ながらこういう不気味な演出はいささか過剰に感じられた。結局オチとしては、同級生2人が同性愛者だったというただそれだけの締め。昨今のポリコレに寄せたエンディングで、個人的にはそこがすごく安易に感じた。


ラストは曖昧でどうなったかはっきり描かれていないが、小学生のLGBTというなんとも感想を言い難い終わり方。
ここは個人ブログなので正直に言わせてもらうけど、後味としては最低だった。是枝監督は本当にこのテーマで映画を作りたかったのか。
昨今の映画って、常に誰かの顔色をうかがって作ってるように見える。誰かに配慮するのは生きてく上で必要かもしれないが、映画という娯楽で多様性や性的少数者を題材にしたら賞が取れる、みたいな風潮には違和感を持つし、客は本当にそんなの求めてるのかな、と思う。

昔みたく細かいこと何も考えず、ひたすら面白い映画を求めていた時代が懐かしく感じる。

監督:是枝裕和
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
2023年  126分