君たちはどう生きるか | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

君たちはどう生きるか

79点

同タイトルの小説・漫画が存在するが、原作は無く内容は完全オリジナル。そして事前情報は一切明かさず写真1枚流出しない徹底ぶり。完全に秘密の状態で公開された宮崎アニメの(おそらく)最後の作品。
しかし主題歌に米津玄師、声優はプロではなく木村拓哉、菅田将暉、柴咲コウ、木村佳乃、そしてなぜかあいみょん。この辺を見る限り完全に流行りに寄せており、やっぱり御大もヒットが欲しいのかなぁとゲスい想像をしてみたり。主人公の声は山時聡真なる無名の若手だが、実はこの少年も事務所は菅田将暉が所属してるトップコートなんだよね(笑)
まぁそういう裏事情は無視して感想を言うと、一見してとにかく宮崎駿らしさ満載の作品なのは見た人誰しもが感じたんじゃないかな。


『君たちはどう生きるか』という説教臭いタイトルだけど、内容にはほぼ無関係。冒頭が戦時中なので『風立ちぬ』みたいな反戦テーマかと思いきや、途中からはもうバリバリ宮崎/ジブリ節炸裂のファンタジー作品だった。そこはファンは安心して見に行っていい。
個人的に『千と千尋の神隠し』以降の宮崎アニメは、かなりぶっ飛んだイメージで意味不明な印象が強いが、本作もまさにそれ。これを完璧に説明できる人は皆無だろうし、そこがむしろ特色なんだと思う。
少年がアオサギに導かれ異世界に渡り大冒険を繰り広げる。その辺は最近だと新海誠監督の『すずめの戸締まり』を彷彿させたが、そもそも新海監督が宮崎アニメに影響されてるわけで、そこは一周回って元に戻ってるんだろう。過去のジブリだと『千と千尋の神隠し』や、個人的には『猫の恩返し』を思い出した。
なるほど本作が宮崎駿の集大成といえばそうなんだろうけど、物語としてはっきりとしたメッセージはなく、これが最後と言われてもピンと来ないし、ぶっちゃけエンドロールまで見ても感動して涙を流すようなものでもない。

ただ圧倒的な宮崎ワールドを突き付けられ、これが俺なんだよと往復ビンタ食らったような、そんな作品。だから大して面白くもないし泣けもしないけど、宮崎アニメここにありと見せつけられた「すごさ」は誰しもが感じたと思う。

 

ただジブリ大好きな自分が死んだとき墓まで持っていきたいのはこれじゃなく、やっぱりナウシカ、トトロ、魔女宅あたりなんだな。


監督:宮崎駿
声の出演:山時聡真、菅田将暉、木村拓哉、柴咲コウ、あいみょん、木村佳乃、竹下景子、風吹ジュン、滝沢カレン、國村隼、火野正平、小林薫、大竹しのぶ
2023年  124分