怖いもの知らずとは、よく言ったものである。
凝固剤と、天然のにがりが違う事は、そりゃあ知ってるわさ。
高いか安いかなんぞは、知ったこっちゃあない。
なぜかと言えば、田んぼや畑の作物に掛けてたんで。
とは言え、今までにない豆腐が出来た以上、職人魂に火が付いた。
それからかれこれ15年、儲からんなあ、2000円にもかかわらず。
言っときやすが、俺が付けた値段じゃあないっすからね。
豆腐屋の若旦那が、東京で、豆腐の会合に出たそうな。
千葉で栽培されたJAS有機の大豆の豆腐、一丁、700円也、税別。
一口食って、口にこそ出さなかったが、何だ美味くねえ豆腐。
帰ってきて言われたのが、豆まだあるか?
あるが、どうした、ただ、毎週作るような量はねえぞ。
あの不味い豆腐が700円なら、俺は、2000円でこの豆腐売りたい。
売れば、2000円と言わず、5000円でもいいよ。
どうせ売れっこねえだろ、2000円なんかじゃ。
ただし、儲かったら、半分よこせよ、それまで豆タダでいいから。
これが、マスコミに受けましてん。
まず、ローカルのABSテレビ。
ニュース番組の、新春恒例の、今年ブレイクしそうなものに、登場。
儲かったら半分よこせの、お遊びのレベルでの話。
いやあ、録画しとけばよかったと思う位、いいテンポ。
年が明けて、2週にわたって、月金の帯での放送。
どうやって儲けようとか、買ってくれなってことは、一切なし。
お遊びが、よくよく画面に現れた。
その後、笑っていいともにも出たんよ。
タモさん、柴田理恵さん、絶賛。
そのほか、東北限定の情報番組やら、ラジオやらにも出たらしい。
豆腐は注目されたが、それを作る大豆はどうでもよかったようだ。
別にいじけた覚えは、全くない。
よっしゃあ、これで売れたら、何ぼか金になるぞ、撮らぬ狸の皮算用。
そんなもんだよ、世の中は。
その時は、絹ごし、今回は、バージョンアップして、寄せ豆腐。
ブランド構築に中心に据えることに。
その名も、亀亀覇スペシャル。
どや。
と言われてもって、ツッコミが山かいな。