採卵後の精子を凍結したいのですが | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

夫が多忙なため中々クリニックに来れません。

せっかくなので今回の採卵後の精子を凍結しておき次回に用いたいのですがこの様な事は可能でしょうか?
また、精子は凍結すると成績に影響するものでしょうか?
 
この様なご質問がありましたのでお答えします。
 
これは勿論可能です。
ただし、余りお勧めはしません。
単身赴任で遠いところに住んでいる方や、出張がとても多い方、旦那様が海外に住まわれている方、この様な場合には凍結精子がある方が旦那様のストレスも軽減されキャンセルも無くなるため、この様に凍結しておいて治療に用いる事はあります。
 

特に海外赴任をしている方の場合、採卵に合わせて帰国する事は時間的にも費用的にもかなりの負担になるため、凍結精子で治療をする事はある程度はしょうがないかと思います。

 

ただ現実問題として凍結により精子の半数は動かなくなります。つまり死んでしまいます。これは凍結という操作が精子に負担をかけているからです。

高齢になり卵子の質が下がり、ただでさえ苦戦している時に、あえて凍結により精子サイドの条件を下げてマイナス要因を増やす様な治療をする事はお勧めしません。

 

また凍結精子を用いる場合には精子の運動性が下がるため、実際にはほぼ全症例顕微授精となります。

以前にも記事にしましたが受精率だけに関して言うと顕微授精が体外受精よりも上回りますが、妊娠率は顕微授精よりも体外受精が高くなります。

また高齢になればなるほど顕微授精よりも体外受精が好ましくなります。

これらの観点からもなるべく凍結精子ではなく新鮮精子を用いて、できれば体外受精を行う方が好ましいかと思います。