初期胚移植をした方が良い場合は | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

一昨日の説明会でも説明したことなのですが、胚盤胞と初期胚移植に関して、「初期胚移植をすべき場合はどのような方が好ましいか」に関してですが、考え方としては以下のようになります。

 

当院でも他院でもまた多くの論文でも証明されていますが、初期胚よりも胚盤胞の方が妊娠率は有意に高くなります。

そのため妊娠率を考えると胚盤胞移植の方が好ましいことは明らかです。これはエビデンスが出ています。

 

ただ胚盤胞にはデメリットがあり、一番のデメリットは胚盤胞にならなければ移植ができないことになります。当然ですが移植しなければ妊娠はしません。

 

「胚盤胞にならないのならば移植しても妊娠しないのではないか??」、この様に考える方が多くいて、その様な疑問を持つことは理解できますが、体外で胚盤胞にならなくても体内なら胚盤胞になり妊娠するケースは多くあると考えています。

 

その理由として体外と体内でどちらが優れた環境か?ということから考えていかなければいけませんが、それは絶対に体内になります。現在の培養システムは体内の環境を極限まで真似て行われています。

企業の努力で日々進化しており相当イコールに近づいていることは間違いありません。

特にエンブリオスコープの場合には一度も外に出さずに胚を培養できるため様々なマイナス要因を極限まで取り除いています。また胚分割を詳細に観察できるため本当に素晴らしい培養システムだと思います。


ただ残念ながら所詮真似でしかありません。様々なホルモンによる微妙な変化、母体からのシグナル、自己修復機構、未知の要因、培養液の問題など解決すべき点は多くあります。もしかしたらこの辺りは永遠に解決できないのかもしれません。

 

高齢になると体内と体外のわずかな違いが胚の発育に影響を与えてきます。

若い方の場合そのわずかの差は胚自身に余力があるため、胚の力で修正することができるためどちらで培養しても変化がない様になっています。


高齢の方で体外で胚盤胞ができいない方こそ初期胚で移植をして体内で育てる方法が好ましいということになります。


技術を過信してはいけなく、常に原点である胚本来に好ましい環境を意識しなければいけなく、それはやはり子宮や卵管の中です。

 

 

胚盤胞のもう一つの弱点として、凍結融解に弱い胚があるということがあげられます。

初期胚と胚盤胞の大きな違いとして、胚盤胞は発生の過程で構造的に胚の内腔に水が入り拡張してきます。凍結は瞬間的に脱水させ、融解の場合にはその逆のことを行わせます。

高齢の方の胚盤胞はこれらの過程において対応する機能が追いついてこないことがあります。

つまり凍結融解に対して弱いということになります。初期胚の場合胚盤胞と違いそこまでこれらの影響は受けません。

胚盤胞を融解しても凍結前の様に拡張せず収縮が続くのであれば、それは凍結胚盤胞移植が向かないということになります。

 

この2点が初期胚の方が好ましいと言える点です。

 

全ての方に通じる方法というものはなく、技術を過信することなく、症例毎に経過を見つつ個別に対応していく事が好ましいのかと思います。