帝王切開をしている場合、帝王切開瘢痕症候群を念頭に | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

一人目は帝王切開をしています。二人目を希望していますが妊娠しません。生理前に不正出血をします。帝王切開が何か悪さをしているのではと不安です。どうしたらよいでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

これは帝王切開瘢痕症候群(Cesarean Scar Syndrome : CSS)という病気が考えられます。

 

現在帝王切開率は日本で上昇傾向にあり約 20%は帝王切開で分娩となっています。帝王切開自体は全く問題ないのですが、問題は帝王切開後に子宮内の傷口が凹み瘢痕化して、これが不正出血、内腔への血液貯留、精子侵入障害、胚の着床障害を引き起こし、続発性の不妊症へとつながるとの指摘があります。

 

またこれら陥凹部への液体貯留が原因で生理痛がひどくなったり腹痛が生じる事も分かってきました。

 

帝王切開術後の子宮内創部を経腟超音波検査にて観察することでこの凹に液体が貯留していることを容易に診断する事ができます。

 

治療が可能なケースも多々あるため一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

 

治療に関しては過去の記事を再度掲載します。

 

帝王切開瘢痕症候群(CSS)の治療

 

CSSの原因は帝王切開により出来た陥凹部に生理の血液が入り込み子宮内へ広がると考えられています。最近では瘢痕部に子宮内膜が入り込み出血を来すという考えもあります(文献1)。

 

治療方法としては保存的治療と手術療法があります。

 

月経異常や疼痛に対しての保存的治療としては、鎮痛剤、低用量ピル、ディナゲストにより症状を抑える事がある程度可能になります。

 

体外受精を含めた不妊治療に対しての保存的治療としては、リュープリンを数クール使用して出血をコントロールして移植する方法があります。

 

また子宮鏡を用いて陥凹部及び子宮内腔の洗浄や、超音波下に吸引チューブを用いて出血を吸引する方法もあり、移植数日前にこれらを行い、それにより成果が出る事もありますが、持続的に出血しているという明らかな原因があるのであれば、その場しのぎでしかないため、根治としてはなかなか難しいものがあります。

 

やはり根治としてはオペで陥凹部を除去する事が一番確実と考えられています。オペは子宮鏡手術と腹腔鏡手術の2種類があります。

 

子宮鏡を用いて陥凹部の前後を削り凹凸をなくして、血液の貯留を無くす方法もあります。子宮鏡で陥凹部の出血箇所を切除し凝固する方法もあるとの事です(文献2)。腹腔鏡手術よりも侵襲が少ないことがメリットです。

 

腹腔鏡手術で瘢痕部を切除して再縫合する方法もあります。

子宮鏡のオペと異なり、腹腔鏡手術の場合切除した前後をしっかりと縫合することにより次回の妊娠分娩に耐えられることがメリットとなります。

子宮鏡と腹腔鏡手術を併用する方法もあるとのことです。

 

文献1

New diagnostic criteria and operative strategy for cesarean scar syndrome: Endoscopic repair for secondary infertility caused by cesarean scar defect.

 

文献2

Surgical hysteroscopic treatment of cesarean-induced isthmocele in restoring fertility: prospective study.

 

参考HP

富山県立中央病院産婦人科HP