もうひとつ、本質と外野をはっきりさせておくが、きみ、ぼくらはこの欄で語り合うかぎり、政治からはきっぱりと一線を画しておこう。とくに、「日本」と「西欧」の「文化的差異」を政治的主張に引き込もうとする向きにたいしてはね。先生が異国に在ってどれだけ日本を思慕していたことか。外国に行って日本のすばらしさを「発見」しない日本人はいないよ! ぼくも先生同様、母国愛では誰にもひけをとるつもりはないよ。ぼくが「自分」以外のことで怒るとしたら、先生のことを別にすれば、日本のためにしか怒らないと言ってもいいくらいだ。あんまりテンションが上がって自分で困る時があるよ! でもきみ、それはここで触れたり混同したりすることではないと思う。なぜなら、ぼくたちは何のために「知性」をもっているんだい。精神の秩序意識をもって本質と外野を区別しておこう。この「区別」そのものが、われわれの知性の行為なのだ。「魂」っていうのはね、知性の本当の根拠でもあるんだ。ほんとうに誠実に考えようとすればそれが解ってくるとぼくは思っている。それがぼく自身の最も大事な経験のひとつだな。それに気づかせてくれたのも先生だ。「学んだ」のではなく、ぼく自身のなかで確かめさせてくれた。 こういうことを言っておくのも多分これきりだ。