週末、Teddyの家へと招待された

1人で住むには豪華な

プール付き庭園付きのヨーロッパ風の家

ボーッとしていると自分が立っている位置がわからなくなる

初めて訪れた時は見取り図を見せてくれと懇願した

クラシカルな家ではない

現代風でお洒落な建物は見る者をそれほど緊張はさせなかった

『迷子になったら捜索願いは出さないでくれ。頼れるのはお前だけだ』

新婚旅行中の夫婦から預かっている猫が鈴を鳴らして出迎えてくれる

モノトーンの合理的で無機質な家具に囲まれて暮らしていた青年のリビングは

驚く事にグリーン、ホワイト、ライトブラウンを基調とした色使いの安らぐ癒しの空間へと変わっていた

観葉植物が目に優しい

秋には知り合いのブリーダーから産まれた子犬を家族に迎える予定らしい

うっかりワインを手土産に持ってきたRoyは焦った

Dylanは未成年なのでお酒で乾杯というわけにはいかない

『マロウブルーは水色、紫、ピンクへと色が変わるんです。同じ淹れ方をしても同じ色にならないんですよ』

Teddyが準備したお茶に視線が集まる

『ほう。女性が好みそうなロマンティックなハーブティーだな』

『刑事はこういう雑学も学ばないと時代に置いていかれるぞ』

スイーツも用意されていた

好きなケーキをどうぞと言われて

マロンケーキに手を伸ばすRoyをいつもお目付け役のTeddyは止めない

『天変地異か?明日は砂漠に雪が降るぞ』

片手で顔を隠しLeeにコソコソと囁くと

Teddyの気が変わる前にフォークを突き刺し

このケーキは自分の物だとアピールした

省略

『紹介します。Dylan 。僕の愛する人です』

Royはフォークを落とし

Leeはただ呆然と見つめている

あんな事件が起きた後だ

Dylanを慰めようと企画した会ではなかったのか

少なくとも2人はそのつもりだった

季節は夏

メールでなく

招待状を送られてきたのには首を傾げたが

何件か事件を抱えていて

わざわざ意図を聞く暇もなかった

2人並んだ姿は凹凸が綺麗に挟まったようにしっくりする

普段どおりのラフな服装に重大な告白が待っているとは思わなかった

前夜に

今の飾らない自然な自分たちを見てほしいとDylanが提案して

Teddyも深く頷いた

青年を見上げ鼻を擦る

『驚いただけだ。君を拒否したわけではない』

Dylanの腕をポンポン叩くとケーキの欠片をフォークで刺し口の中へと含ませた

そしてそのフォークで残りのケーキを平らげた

乱暴ではあるが、Royなりの好意の表し方である

Teddyの嫉妬の視線が痛い

親友がGAYでもあるLeeはTeddyの告白に大袈裟なリアクションをとる事もなく

感慨深げに優しく微笑んでいる

あの青年がついに生涯愛する人を見つけたのか

それを俺たちに真っ先に教えてくれた

こんなに嬉しいことはない

Teddyとの数年間が映画のワンシーンのように浮かんでは消える

『僕でも人を愛することが出来るでしょうか?』

女性遍歴が派手な青年から意外な言葉を聞いた

『ChrisとMayaが出逢ったように…。僕にもそんな未来があるのかな』

心細げな声で呟いた後

背中を向けた

あの時だけだTeddyが弱さを見せたのは

『Ameliaを口説けばあの屋敷に入りこみ安いと冗談は言ったが、まさか息子を口説いていたとはな』

『オリンピック候補選手を口説くとは鋼の心臓だ』

『Dylanはシャイだが優しくて才能のある子だよ。Teddyは女の趣味は悪いが男の趣味は良い』

問題のある女にひっかかっては別れるのに苦労していた

Dylanを見るTeddyの瞳には曇りがない

息子のような年の2人を見るのがくすぐったくて仕方がない

幸せな愛のかたちがそこにあった

省略

『このマークはどこかで見たことがある…』

ある写真にTeddyが反応した

『これは×××××××という施設にもあったマークだ。どこで見た?』

『………友達の家で見た気がします』


『やあTeddy。パパやママは元気かい?』

その人は初対面なのにパパやママの事を聞いてきた