Side−S
『夢』の中でマサキに無理矢理してしまったことに、後悔は無かった。
マサキの命を護る為には、他に方法が無かった。ただ、マサキのことが心配だったんだ。
『コッチ』の世界で、雅紀がオレを探していた時に、脇目も振らずオレに向かって駆けて来たその姿が今も忘れられない。
『翔さんのこと、恨むかもね?』
ニノに言われた言葉を、時折思い返す。
それでも構わない。掛け値無しに雅紀を想う気持ちに名前を付けるのなら、それが『愛する』ということなのかな…
「ねぇ、翔ちゃんて凄いね?」
「…うん?何が?」
「だって、俺が翔ちゃんを探してたの、分かってたみたいで。直ぐに声を掛けてくれたでしょ?」
「フフ…。オレも、雅紀を探してたからだよ?」
「…そうなの?」
びっくりしたような、でも凄く嬉しそうな顔で、オレを見つめてくれる雅紀が愛おしい。
「なんか…嬉しいな。翔ちゃんも俺を探してくれてたなんて…」
…雅紀。
その笑顔と、その言葉だけを胸に…
「オレはもう少し頑張ってみようかな…」
「翔ちゃんは…」
いつでも、凄く頑張ってるよ?俺は知ってるもん。
「…ありがとう」
オレはそう言って雅紀を抱きしめると、その肩に顔を埋めていた。
…つづく。