Side−M
翔くんと会うことをやめたと聞いて、オレは雅紀のアパートを訪ねた。
「まぁ、飯はちゃんと食ってんのか?」
「…食べてるよ」
「今日はオレが作ってやるから、まぁはそこに座ってて?」
「潤にぃ…」
雅紀がオレの腕を掴んだと思うと、オレの胸に顔を埋めた。
「…相手が違うんじゃ…ん!」
雅紀がオレの唇を塞いだ。
「潤にぃ……抱いて?」
「…そんなこと、出来るかよ」
「いいから…目茶苦茶にしてよ…」
オレのシャツのボタンを外そうとしたまぁの指先が触れた。
「まぁ、震えてんじゃん…」
「……。」
「そこに座れよ…」
まぁはオレから手を離すと、俯いたままソファーに腰掛け、オレもその隣りに座った。
「自分が翔くんに不釣り合いだなんて、思うのはやめろよ…」
「潤にぃ…」
「あれほど翔くんのことを離さないって言ってたまぁは、何処にいったんだ?」
「……自信が、失くなっちゃったんだ」
「…バカだな?まぁは…」
オレはまぁの肩にそっと手を回し、抱き寄せた。
「翔くんは、まぁのことしか頭にないんだぞ?それは、分かってるよな?」
「……。」
「自信を失くしたくらいで、そんな簡単に翔くんから離れてしまったら駄目だろう?」
「……でも」
「それに、自棄になってオレなんかにこんなことしちゃ、駄目だ。」
「……。」
「まぁはオレにとって…可愛い『弟』なんだよ?」
「……。」
「可愛い『弟』には、幸せになってもらいたいんだよ。もちろん、翔くんにもだ。」
「……潤にぃ」
まぁは堪えていたのか、肩を震わせ涙を零した。まぁを慰めようとして、オレもいつの間にか泣いていた。
「泣きたくなったら…いつでも…兄ちゃんのところに…来ていいんだからな?」
「……うん…っ…」
「気の済むまで…泣いていいんだぞ?」
「…潤にぃ…っ…」
「一人で抱え込むなよ?な?」
「……う…んっ…うく…っ…」
「たまには、家に帰って来い。そんで、智にぃの作る…甘い玉子焼きやカレーを食べに来いよ?」
「……うん…っ…」
「オレも…まぁの好きな…唐揚げを作ってやるから…な?」
「……潤にぃ…っ…うく…っ…」
まぁは堪えきれずにオレの胸で泣きじゃくった。
オレは…
まぁとようやく本当の『兄弟』になれたんだな、そんな気がした。
…つづく。