Side−A


蒼の国のサトシ皇子と黄の国のカズナリ皇子をもてなすため、庭園の中にある東屋で、急遽お茶会を催すことになった。


ところで、どうしてこの皇子達はショウ皇子の『側室』になったばかりの俺を訪ねて来たんだろう?



そんな様子の俺を察してか、タツヤがお茶をカップに注ぎながら理由を尋ねてくれた。


「理由はただひとつ。再三再四、我が国の王女である私の姉を、是非ともショウ皇子の『側室』にとお願いしておりましたのに…」

「ショウ皇子から、翠の国で見つけた女性に心を奪われてしまったとの手紙をもらい、どのような方なのか一度はこの目で確かめたく…」


それで、わざわざ訪ねて来たってことか…


それも、ショウ皇子が不在の時を狙ってのことらしい。


「いや…それにしても、このように美しい方だとは…」

「確か、貴女は人妻であったと聞いております。いやぁ…なかなか、ショウ皇子も隅に置けませんな?」


「お…おほほほ…」


俺は男だとバレないように、『極力喋るな!』だの『足を開くな!ちゃんと閉じて座れ!』だの、タツヤから口喧しく言われて、大人しく従っていた。



「ショウさまは情熱的なお方ですので、ミヤビさまには夫と別れて、どうしても私の『側室』になってくれと、それはもう…大変熱い申し出をなさっておいででした。」


タツヤがフォローしてくれるのはいいんだが…



「どうでしょう?一度は我が蒼の国においでになりませんか?」

「いや、我が黄の国こそ、ミヤビさまにはきっと気に入って頂けるのではないかと…」


ショウ皇子が不在なのに、他所の国へ行ってしまってはマズいことになる。


きっと俺は『浮気者』だとか『お尻の軽い女』だとか、ロクなことを言われかねない。そんなことになれば、ショウ皇子が恥をかくのは目に見えている。



もしかしたら、それがこの二人の皇子の一番の目的かも?


「私は…」


タツヤに睨まれたけど、この際そんなの構っちゃいられない!


「まだ炎の国に来て日が浅く、しきたり等まだまだ覚えなければならない事が数多くございます。」

「…んふ?」

「それが…なにか?」


「勉強不足なままの私が一人で他国を訪ねるなど、以ての外。どうしても訪ねて来いと仰るのでしたら、ショウさまと一緒に訪ねとうございます。」

「…これは」

「一本取られましたね?サトシ皇子」


「流石は、ショウ皇子の見初めた方でございますね。美しいだけではなく、機転が利くとは…」

「納得がいきました。」


やれやれ…


それならば、各々の国へと帰ってもらえるかな…



「ミヤビさまと、もう少し」

「話がしてみたくなりました」


……!!


お願いですっ!


どうか大人しく、国許にお帰り下さいっ!!





…つづく。