Side−A


「雅紀にだけは…その我儘を全部叶えてやりたいって思ってるから…」


…嬉しかった。


凄く、凄く嬉しかった。


僕の存在する意味を、翔ちゃんが教えてくれたような気がしたから…



「…翔ちゃん」

「…ん?どうした?」


「キスして…?」

『…チュ』


「ギュッて…して?」


翔ちゃんは壊れ物に触れるように、僕を優しく抱きしめてくれた、けど…


「もっと、強く…ギュッとして?」

「うん…」


今度は強く強く、翔ちゃんの胸の音が僕の耳元に聞こえるくらいに抱きしめてくれた…


「翔ちゃん…」

「うん?」


「…来て?…抱いてほしいの…」

「…優しく出来なくても、いい?」


「ふふっ…いいよ?目茶苦茶にして?」




翔ちゃんは僕を抱きしめていた腕を少し緩め、ほんの少し体を離すと、僕の顔を見つめた。


重ねた唇は直ぐに舌を絡めて、息も出来ないほどに口づけられ、僕はそのままベッドに沈められた。



「しょお…ちゃ…ん」


『チュ…クチュ…クチュ…』


水音だけが響いていて…


「あ…ん…好き…だよ…しょお…ちゃ…」

『チュ…チュ…』


「ねぇ…なんか…言って…よ」

「…まさき…」


「好き…?」

「ん……好きだ…」


「ねぇ…しょお…ちゃ…ほしい…」

「くれてやるよ…全部」



翔ちゃんと繋がると、その言葉通りに全部僕の中で受け止めた。




薄闇の中、手を繋いで少しずつ話をした。


「前にね?智にぃが言ってたことがあって…」

「…うん?」


「着てる物とか、身に付けてる物とか、そんな物全部剥ぎ取ったら…その人の、人となりしか残らないんだって…」

「へぇ…?智にぃが…ねぇ…」



「なんか…嬉しかったなぁ…」


そんな話をしたのは、もうその先何があっても、翔ちゃんへの想いは変わらないよ、って言いたかったからなんだよ…


翔ちゃんに、ちゃんと伝わったかな…


伝わっていますように…



そう願いながら、翔ちゃんの胸に顔を寄せると僕は深い眠りに落ちていった…






…つづく。