Side−A
翔ちゃんの唇がそっと、俺の唇に触れた…
俺にとって、これが…ホントの…正真正銘のファーストキス、だよね?
あんな『夢』の中でキスとか、それ以上のことをしちゃったけど…
「…雅紀?」
「あ…ううん?なんでもない」
「やっぱり…いきなりは…よくなかったかな…」
「そんなこと、ない!…から」
「ホント?」
「…うん」
また、『し…ん』としちゃった。
「あ、あの…期末試験の結果が返って来たら…翔ちゃんに、間違ったとこ、見て…もらいたいんだけど…ダメ、かな?」
「いいよ?」
「…いいんだ?」
「当たり前だろ?」
なんだか、ホッとした。
ホッとしたら、眠くなって…きて…しまって…
「オイ!もっとしっかりやれ!」
…えっ?ここ、どこ?
「なに、ボケっとしてるんだ!」
げっ!!オカダさんだ…
って、ことは…
「素振り100回!腕立て50回!」
俺は、また『夢』の中にいるの?
もぉ、ヤダ!!
翔ちゃんの居る『あっち』の世界に戻りたいよぉ!!
「早くしないと、サトシ皇子とカズナリ皇子が来てしまう!さっさと、済ませろ!」
「はぁ?!」
あの二人、まだ居るの?
「昼過ぎまで寝てるはずだから!それまで稽古を終わらせろ!」
…えーっ?!
「今日は!私も一緒に!素振りと!腕立てを!付き合うから!」
オカダさんが素振りを一緒にしながら、俺に檄を飛ばす…
いやいやいや…そういうことじゃなくて…
「ほぉら!あと、素振り50回!」
筋肉痛になっちゃうよぉ…
「少しは!筋肉を!つけろ!生っ白い体では!何も!護れないぞ!」
筋肉をつけろって言われてもなぁ…
俺がムキムキになったら、ショウ皇子はどんな反応をするんだろうな…
いやいやいや…!
俺は、こんなことしている場合じゃないのにぃ!
翔ちゃーん!!
取り敢えず素振りと腕立てのノルマをクリアしたら、『あっち』の世界に戻れるのかなぁ…
「うぉりゃあぁぁぁっ!」
もぉ!ヤケクソだぁっ!!
…つづく。