Side−A
翔ちゃんと朝を迎えた。
朝は嫌い。翔ちゃんが行ってしまうから。
でも、僕の所に毎日帰って来るのなら。それなら、そんな毎日なら嬉しいな…
翔ちゃんの帰り支度を見ながら、そんなことを思ってたら…
「雅紀?なに…?」
翔ちゃんが振り返って言った。
「ううん?なんでもない」
「『なんでもない』は、言わない。言っただろ?雅紀の我儘は全部叶えたいって」
「…うん、あのね?」
翔ちゃんの顔を見ながら言うのは恥ずかしくて、背中に顔を埋めた。
「こんなふうに、毎日…一緒にいられたらな…なんて」
翔ちゃんが黙ってしまった。やっぱり、無理なんだよね…?
「就職先が決まって大学を卒業したら、二人で暮らそう。」
「…出来るの?そんなこと。」
「雅紀の我儘は全部叶えたいから。それに、オレもそうしたいって、思ってるから。」
驚いてしまって、思わず翔ちゃんの背中から顔を上げたら、翔ちゃんのキスが降りてきた。
叶わないかも知れないのに、翔ちゃんもそうしたいんだって、言葉にしてくれるのが…
「…嬉しい」
僕は自然と口にしていた。
きっと、今までの僕なら口にするのも躊躇らっていただろうな…
翔ちゃんの言葉には魔法の力でもあるのかな、なんて…
つい、子供じみたことを思ってしまった
…つづく。