Side−S
寝落ちした雅紀は、オレの膝枕で『すぴすぴ』寝息を立てている。
どうやら『夢』の中での『マサキ』は、『オカダ』にしごかれて、剣術の稽古をさせられているみたいだな…
「もぉ…ヤダ…くそっ…!」
眉間にシワを寄せながら、寝言を言う雅紀も愛おしくて…
ふと、このまま目が覚めなかったらどうしよう…なんて、思ってみる。
それなら、王道の『皇子さまのキス』とやらをぶちかまして、起こそうかな…
雅紀はどんな顔をするのかな…
『なにすんの?やめてよ!』って、怒るかな?
それとも、『翔ちゃんたら…もぉ…』って、照れ臭そうにするかな…
「…ん、いたたたっ…」
雅紀が苦しそうな顔で目を覚ました。
「お目覚めですか?お姫さま…」
「あれ…?俺また寝ちゃってた?」
「やっぱり、疲れてんだと思うよ…」
「…ごめん!また、膝枕してもらってた!痛くない?…いたっ!」
オレが痛かったのではと気遣い、慌てて起き上がろうとして、突然体に痛みを感じたらしい。
「オレは大丈夫だけど?雅紀はどこか痛いのか?」
「うん…なんか…肩とか腕とか…筋肉痛みたいになってる」
「寝違えたんじゃない?」
「翔ちゃんの膝枕で?俺の寝相酷かったの?それならホント、ごめんね?」
「それか、試験勉強で腕とか手とか、変に力が入ってたのもしれないな?」
「…そう…なのかな?」
雅紀は肩を回したり、腕をぐるぐる回しては、何でかなぁとブツブツ独り言を言い始めた。
「それよりも…」
「…なに?」
「オレと付き合うって言ったこと、忘れてないよね?」
「……うん」
「たまには…その…大人の勉強ってヤツを…」
「……うん?」
「して…みたい…かな」
「………う…ん」
オレは雅紀の頬に手を伸ばし、ひし形の唇に何度もキスをした。
…つづく。