Side−S
「マズいな…」
この頃、思わず口をついて出てしまう言葉。
「何がマズいの?翔さん」
ここは、生徒会役員室。誰にも気兼ねなく、本音を言える場所。
そして…
「なるほど…。雅紀は『夢』の中の筋肉痛が、そのまま残っちゃったんだ?」
「当然と言えば、当然でしょ?」
「だから、マズいんだよ。」
「だから、上手く誤魔化したんでしょうよ?それなら、このままイケるんじゃないの?」
「相手は、あの『雅紀』だもんな?」
二宮も松本も、楽観的に言ってくれるが…
「オレの身にもなれよ!いつまで誤魔化せるか、こっちはハラハラし通しなんだぞ?」
「誤魔化せなくなったら、その時はその時でしかないよ?」
「そりゃあ…そうだけど。だけどもよ?」
「いっそのこと、もう分かった方がいいんじゃねぇの?」
オレの弱気な言葉を遮って、松本が口火を切った。
「それは…!」
「なに、今更弱気になってんの?いつかは分かるんだよ?遅いか早いかの違いだよ?本当は…」
そう、本当は…
「『こっち』の方が『夢』で、雅紀が『夢』だと思ってる世界が『本当』の世界だってこと」
…つづく。