それでも僕はまた君に恋をする25 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

うらあら、ひっさしぶりに聴く曲もちょこちょこあって
めっちゃテンション上がる(*^^*)
そんな私はもう1日1話を危ぶみ始めている←



















「ほんとはさ」


大野さんがぽつりと言う。


…何処から風が入ってきてるんだろう?


さあっと吹いてきて、火照った 身体を 優しく冷ましてくれる。


大野さんがこの古びた一軒家が好きな理由、少し分かったかもしれない。


虫の音。風の流れ。木々の揺らめき。


便利な暮らしの代わりに忘れかけてた。


「おいら全然好きじゃないんだ、釣りも魚も。」


…え?


布団の中で驚いて大野さんの顔を見る。


も、俺の視線に恥ずかしそうにちょっと隠れてしまった。


「…でも、だって…」


── あ、もしかして…この話受けてくれたのって、この前の釣り特集で?


それで今回うちの雑誌社との話を受けてくれたんじゃ…


「んふふ。あなただってわかったから。文章読んだ時、すぐわかったよ。」


文章というと、俺の記事のことだろう。


そうだ、名前も知らないはずなのに俺だとわかってくれたからこうして出会えたんだ。


「どうしてわかったの…?今世では会ったこともなかったのに…。」


「んふふ、そりゃわかるよ。どれだけ文(ふみ)を交わしたと思ってるの。

文を何百、何千通も重ねたら、いくら生まれ変わってたとしてもなんか癖みたいなもんは残ってるんだ(笑)

だからね、声掛けて貰えるよう仕事を頑張ったの。予定詰めまくったよ、それこそ秒単位で。」


「…俺に会うため…?」


「そう。釣りとか好きなんだってわかったから無駄に魚のことも調べて…ベニクラゲもその時知ったの。だから…和のとこに手紙が来た時は嬉しかったぁ。」


代理人である二宮くんに送った時には、俺はもう二宮くんと出会ってて…


ああ、それすらもあなたを取り巻く運命に思えるから不思議だ。


「…俺…これが運命だって…そういう歯車なんだって…。

いつもあなたが来てくれてたんだね…。

いつもあなたが…努力してくれてたんだね……。」



血まみれで俺の家の前に倒れてた時も


転校生として俺の学校に来てくれた時も


あなたは俺を探してくれたんだね



運命だと


勝手にそうなるものだと


俺は何もしなかったのに。



「けど…毎回よく見つけられたね?」


「んふふ…覚えてないもんね。桜だよ。」


「え?」


「『春は出会いの季節だから、次は桜の下で会いましょう』。

そう、翔くんが言ってくれたんだよ。

だから出会いはいつも桜にまつわる場所だったでしょう?

記憶がなくなっても適用されててよかったぁ。」


そう言われて、思い出す。


江戸の時代にあなたが越して来てくれた俺の住む町は桜町。


学校は紋章が桜の花で。


組員の彼の背中には桜の刺青が入ってて…。


ぶつかった時に着てた着物の模様や、


偶然出会った店の名前──。


思い出す全てが、桜に関係してた。


俺が言い出したことだったなんて。


俺が忘れていても、生きてたんだ。


2人の約束、いや…培ってきた運命、みたいなものが。


「Sakuraって名前は…俺と繋がるため?」


「まぁ、毎回色々試してたから…

今回は一応ペンネームをそうしたし、桜にまつわる場所にはたくさん行ったりしてたよ。

桜井って文字を雑誌の傍らで見つけた時はビックリしたよ。ああ、今回名前被りだ!って(笑)」


大野さんが俺の腕の中で嬉しそうにふふっと笑う。


「Miyabiって雑誌も、雅桜って種類があるし…それに前も言ったけど文章見てあなただって直感したから。

だからたくさん仕事してお話貰えるように頑張って…

んふふ、何か先生とか言ってもらえる人になっちゃった。

前はあなたが先生だったのにね(笑)」


雅桜、なんて種類知らなかった。


思わずぎゅっと抱き締める腕に力を込めると、大野さんが優しく笑う。


「でも…病気になっちゃった。ごめんね、折角…こうなれたのに。」


ズキリ、胸奥が鉛をつけたように重くなる。


明確な形で終わりが見えている。


今までもそうだと思ってたけど


今回は簡単に受け入れられない。


だって次の人生は──。



「…信じるから。」



俺の心を読んだかのように大野さんが力強く呟く。


「あなたを…あなたとのこれまでの絆を…信じる、から……。」


大野さんの瞼が重そうになってきて。


「…もういいよ。疲れたでしょう?…おやすみ。」


「…ん…。もう…離さない…で…。」


大野さんは小さく呟き、そっと目を瞑った。


本当に…心身ともに疲れたんだろう。


大野さんはそのまま、スースーと優しい寝息を立て始めた。


 

愛しい寝顔に優しく触れる。


ずっと隣にいたのに、触れられなかった。


愛してるっていくら伝え合っても、繋がれなかった。


それが…今回はこんなにも近くにあなたがいる。


…脆く、儚いけれど。



たくさんの恋が実った瞬間



俺らの未来の扉は閉ざされてしまった。

 



この先は、真っ暗闇だ。


わかってる。


だけど俺は必ず見つけ出す。


そう自分を信じる。


じゃないと…今更、怖くてたまらなかった。


もう会えないかもしれないだなんて。



それが自分で望んだことだっていうのに──。


 

細い指に自分のそれを絡める。


あったかくて、泣きそうになる。


「愛してる。愛してる。…愛してる。」


何回呟いたって足りない位。


あなたのことを想って生きてきた。


だから、大丈夫。


「死がふたりを分かつまで…ううん。

死して尚。俺はあなたを諦めないから…。」


 

約束なんてもうまっぴらだけど


これが二人での最後の約束にしよう。


 

「どんな運命が待ってたとしても、俺はまたあなたに恋をするよ。」


 

奇しくもそれは、俺らが最初にした約束と同じものだった。