今回の記事は、いつもと趣を変え、ある女性の死とその死に関係する「死後事務委託契約書」と「遺言書」について書いてみます。
昨年、2023年12月29日の早朝、ある女性が亡くなりました。
彼女は、1DKの市営住宅で独り暮らしをしており、享年は満で72歳、死亡原因は、脳内大出血でした。
部屋で倒れているが発見されたのは、12月25日の午後3時頃です。
20代の頃から腎臓病を患い、40代に入り腹膜透析を行い、この10数年間は血液透析を受け、透析患者であることから、一級の障害者手帳を持ち65歳頃から要介護2の認定を受けていました。
そんなこともあり、彼女を最初に発見したのは、部屋を訪れた訪問ヘルパーでした。
直ぐに救急車で病院に運ばれましたが、脳内の出血量が多く(通常、致死量の約3倍)、医者も手の施しようがなく、その時が来るのを静かに待つしかない状況でした。
前日の夜10時頃に電話で話をしていたので、それまで元気だったことは分かっています。
医者の話では、この量の出血ならば、痛みを感じることなく一瞬にして気を失ったと思われるとのことでした。
亡くなったのは、29日の早朝(4時55分)なので、倒れてから5日足らずで息を引き取ったことになります。
彼女の両親は既に他界をしており、兄が一人いましたが、その兄も20年程前に亡くなっています。
お兄さんは、未婚のまま亡くなっているので、その子供もいません。
彼女も独身だったことから、法定相続人はいませんでした。
一番近い親族は叔父、叔母になると思われますが、その方達との付き合いはなく、生存しているとしても、かなりの高齢となります。
聴いた話では、このように親族と連絡がつかない場合は、遺体は役所が引き取り、火葬された後は、無縁仏として葬られるとのことでした。
そんな彼女ですが、40年以上の付き合いがあり、彼女の死後の手続きは一切責任をもって執り行うという約束をしている方がいました。
ここからが、今回の本題ですが、そのような約束をしていたとしても、役所などへ届け出をしても、親族の証明が無ければ、手続きを進めることは困難となるのが現実のようです。
除票を請求しても、正当な理由が証明できない場合は、請求を棄却されることもあり得ることです。
司法書士に依頼しても、その司法書士に委任状を交付出来なければ、司法書士もどうすることも出来ません。
そんな中、今回、あらゆる手続きをスムーズに進めることができたのは、彼女の残された財産を処分できることを記載した「公正証書 遺言」と「死後事務委託契約書」の存在でした。
この二つの書類は、彼女のお兄さんが亡くなったとき、万が一の状況が起きたときに困らないようにと作成したものでした。
作成した時は、そこまで有効に機能するかという不安もあったようですが、実際には有効に機能し役に立ちました。
遺品整理は、業者に一括して依頼しましたが、親族以外からの依頼だったので、遺言書と契約書の提示が無ければ、依頼を断ることもあり得たと業者からも言われたそうです。
葬儀は、葬儀場で通常100名程度が参列できる会場で1名の出席で執り行われました。
火葬した後、彼女の遺骨は、知り合いの寺院の安置所に運びこまれ、現在は、そこにあります。
1周忌を迎えるまでには、彼女の両親やお兄さんの遺骨が納骨されている大阪の四天王寺に納め、永代供養の手続きをしようと思っているとのことです。
人間は、自らの命が尽きたとき、そして、その人が生きていた時の記憶が、残されたものから消える時の二度死ぬと言われているそうです。
残された者が、その人の記憶を大事にして生きていくことの重要性を感じる話でもあります。
それでは、また・・・。