地盤沈下に喘ぐキリン・ホールディングス


キリンの地盤沈下が止まらない。



もともとキリンはビール業界では草分け的存在であり長い間圧倒的な首位の座を守ってきた。

ところが、アサヒが1987年に投入した「スーパードライ」がビール業界にイノベーションをもたらし、爆発的なヒットを記録。

1997年には遂にビールでのNo.1ブランドをアサヒの「スーパードライ」に明け渡し、後塵を拝することになった。


また、企業全体で見ても、キリン・ホールディングスは2014年6月の中間決算で、売上高が前年同期比3.6%の減少となる1兆562億円、純利益は76.5%と
大きく減らして140億円となることを発表した。

2009年に持ち株会社に移行して以降、日本では業界No.1のポジションに君臨してきたが、今年度はサントリー・ホールディングスが大型買収を成功させ、中間決算時点では首位に輝くなど、通期でもキリンの首位陥落は現実味を帯びてきている。

ビール業界では、サントリーやアサヒが業績を伸ばす中、一人負けといっても過言ではないキリンの主な要因は「主力の個人向けビールが振るわなかったこと」と「海外展開での失敗」といえる。

キリンのビール類の販売は、発泡酒と第3のビールが65%を占めるなどアサヒの35%に比べれば割合が非常に高く、しかもその9割以上が家庭用需要と売上に大きな偏りがある。

このような売上構成の下で、消費税が4月に増税され駆け込み需要の反動減よって、キリンは大きく売上を落とすことになったようだ。





さらに、海外展開でもキリンは大きく躓いた。

キリンは、2011年8月にブラジルにおけるビール業界第2位スキンカリオールを2000億円で買収することを発表した。

ブラジルはビールの消費量が日本の2倍ほどもあり、尚且つ毎年10%程度成長している有望市場。
おいらは下戸なんでよくわからないが、ブラジルってビールの国だったのだ。

しかも、2014年6月にはサッカーのワールドカップを控え、益々需要が高まることが予想された。

ところが、この買収劇がキリンにとっては大きな誤算に終わった。
おいらが、南アフリカサッカーワールドカップがあるから、南アフリカランドに積極投資したのと規模は違うが一緒(笑)
その後の「リーマンショック」で、おいらは大損害を被った。

まずは買収の際に株主のゴタゴタに巻き込まれ、最終的に要した買収費用は
当初の予算を1000億円も上回る3000億円にまで膨らみます。

しかも、当て込んでいたワールドカップ需要も、蓋を開けてみれば「バドワイザー」を擁するアンハイザー・ブッシュの前に大苦戦。

今年の1‐6月期で、売上高883億円、営業赤字39億円と惨敗を喫した。


このように、国内、海外で業績不振の続くキリン・ホールディングスだが、どのような打開策を
見い出せるだろうか?





キリンビールが業績不振から抜け出すために繰り出した戦略とは?


日本におけるビールのほとんどは“ピルスナー”と呼ばれる種類のビールだそうだ。

これはキリンの『一番搾り』であろうが、アサヒの『スーパードライ』であろうが、サントリーの『ザ・プレミアム・モルツ』であろうが、変わらないということ。

そうすると、なかなか味で差別化することは困難を極める。

キリンビールの磯崎社長もメディアの取材に答えて、ビールの味はどの会社も似たり寄ったりで、それが顧客を失ってきた原因だと述べていた。

最近では、第3のビールなどで、“おいしい”という感性で勝負するのではなく、“カロリーゼロ”や“プリン体ゼロ”といった機能面を強化して差別化を図ろうという企業の姿勢も強まってきている。

ただ、キリンが力を入れるのは“クラフトビール”と呼ばれるもの。

実はビールにはピルスナーだけでなく、様々な種類のビールが存在するらしい。

おいらはよくわからないけど、まだ酒をやめる前に、ドイツにも住んでいたことのあるビールに造詣の深い友人から、いろいろなビールを教えてもらい、その味覚や香りの違いに驚いた経験がある。

たとえば、“エール”と呼ばれる種類のビールを飲んだ時には、非常にフルーティな深い味わいで従来のビールの概念を覆されるほどの衝撃を受けた。根が単純なんで、しばらくはドイツかぶれしていた。

日本でも最近ではピルスナーではないクラフトビール人気が沸騰し、ビール市場全体が縮小する中、今後成長が期待される分野となっているようだ。

キリンはこのクラフトビールに目を付けたわけだ。

キリンビールHPによると、まずは、「スプリングバレーブルワリー」と、キリンビールの起源となったブルワリーを冠したクラフトビールのプロジェクトを7月にスタートさせ、現在は第3弾の「JZB」の予約を受け付け、大変な人気を博しているらしい。

極めつけは、「よなよなエール」などクラフトビールのリーディンカンパニーである星野リゾートの100%子会社であるヤッホーブルーイングと資本業務提携を発表したことだろう。

ちなみに、星野リゾートは喫煙者は入社できない(笑)  どうでもいいけど。

キリンは最終的に33.4%の株式を取得して星野リゾートに次ぐ、第2位の株主となる予定。
ヤッホーブルーイングは、クラフトビールの人気が拡大するに伴い、毎年数十%の成長率で業績を伸ばしている企業。

ただ、製造設備が限られているヤッホーブルーイングにとって、大手ビールメーカーと提携して、需要に追い付かない分の生産を委託することは緊急の課題となっていたようだ。

一方で、価格競争が激しく、味覚で差別化の難しいピルスナーから脱却し、収益率の高いクラフトビールをプロダクトポートフォリオに加えたいキリン。

この両社の思惑が一致して、資本業務提携に至ったというわけ。



ヤッホーブルーイングは今後、年間1000から2000キロリットルをキリンビールに委託する予定で、原材料の共同調達や物流の活用も進める方針だそうだ。

キリンは、今回の資本業務提携を通じて、クラフトビール会社が培ってきたイベントやネットを通じたファンづくりのノウハウを吸収し、自社のマーケティング戦略に活かしたい考えだ。

現状、クラフトビール市場は、500万キロリットルほどあるビール系市場のわずかに過ぎないが、今後は2%から4%程度にまで拡大する余地があり、金額に換算すると400億円から500億円規模まで成長することが見込まれている。

そんな成長市場において、キリンは大手の中で早期に市場を押さえておけば、今後市場で圧倒的なプレゼンスを実現し、停滞するビール事業の起爆剤になりうると判断したのだろう。




果たしてキリンの思惑通り、クラフトビールがビール事業の救世主となるのかな~?