Q&A90 MLC検査と夫リンパ球免疫療法 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 胚盤胞移植を4回(内1回は2段階移植)していますが着床したことがありません。着床障害を疑いましたがMLC検査以外の血液検査では異常なしでした(染色体検査は行っていません)。MLC検査を勧められていますが、ネットを見るとMLC検査と夫リンパ球免疫療法は賛否両論あるようで不安です。MLC検査と夫リンパ球免疫療法について先生のご意見・お考えをお聞かせください。

A MLC検査と夫リンパ球免疫療法については、不育症の方に対して。約20年前に多くの施設で行われていましたが、現在ではほとんど行われなくなりました。FDA(米国食品医薬品局)が、夫リンパ球免疫療法を禁止したことが最大の要因と思われます。
そのもとになった根拠は、世界規模のRCTスタディーによります。最終的な結論は、ごくわずかな方に夫リンパ球免疫療法が有効であるものの、MLCやHLAなど現在可能な検査で、夫リンパ球免疫療法が有効である方を抽出することはできないというものです。また、夫リンパ球免疫療法は、広い意味で輸血と同じです。血液を介して様々な病気が伝播するため、輸血は可能な限り避けるべきであると考えられることから、選択肢から消去された格好です。
さらに、不妊症の方に対して、夫リンパ球免疫療法が有効であることを示す証拠はありません。
不妊症専門医は、必ずしも不育症の知識が豊富ではありません。一度、不育症専門医の診察を受けられてはいかがでしょうか。