本論文は、食生活が体外受精の成績に影響を及ぼすかについて検討したものです。
Hum Reprod 2016; 31: 563(米国)
要約:2007~2013年に体外受精を行った232名353周期を対象にした前方視的検討「EARTHスタディー」です。今回の検討は、体外受精実施前に食事調査を行い、その内容と妊娠成績を検討しました。年齢と摂取カロリーで補正したところ、1日3.02回以上の食事を取る方は、1日1.34回未満の方と比べ、21%生産率が増加しました。その他の交絡因子で補正したところ、この現象は35歳以上の女性にのみ有意差を認めました。
1日の食事回数 補正生産率
35歳以上 35歳未満
<1.34回 23% 54%
1.38~1.94 39% 50%
1.96~2.97 29% 53%
3.02~6.15 55% 46%
解説:現在、6組に1組のカップルが不妊に悩んでいます。女性の年齢とBMIが不妊症のリスク因子であることに疑いはありませんが、食生活も重要ではないかと考えられています。米国では毎日の食事の総カロリーが年々増加しています。動物実験では、ガラクトース(牛乳に含まれる)の摂りすぎは排卵障害や早発卵巣不全(POI)をもたらすこと、欧米の牛乳には性ホルモンが大量に含まれていることが知られています。牛乳の摂取は妊孕性(妊娠できる力)が低下することが31カ国の調査で明らかにされていますが、逆に牛乳を毎日3杯以上飲む方では不妊症の頻度が低いことも報告されています。また、高脂肪食は排卵障害の低下に、低脂肪食は排卵障害の増加につながるという報告もあります。このように、食事と不妊の関係に一定の結論は得られていません。本論文の研究は、このような背景のもとに行われ、食生活が体外受精の成績に影響を及ぼすかについて検討した初めての報告です。本論文は、食事回数が多いことは害ではなく、35歳以上の女性にとってはむしろ得策であることを示しています。