Q&A1041 ☆着床の窓をズラして移植しようと思います | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 顕微受精を行って5年、15回移植を行っていますが、1度流産した以外に妊娠できません。今回グレード1の良好胚をホルモン補充で移植しましたが、妊娠には至りませんでした。

2年前に通っていた病院でホルモン補充で内膜日付診を行ったところ5日目の内膜が2~3日目相当という結果でした。今の病院の先生は内膜のズレは関係ないという考えですが、この記事を読んでもう1つ凍結してある良好胚は2日ズラして移植しようと考えています。そこで少し教えていただきたいのですが、ズラして移植することで気をつけなければならないことはありますか。私が気になっているのは、検査した病院と違うので、使っているホルモン剤の種類と量が違うので影響があるのかということと、初期胚3日目で凍結していて前回は融解翌日のコンパクションで移植したんですが、胚盤胞になるまで待ってから7日目の内膜に移植するかということです。

A まず、従来の子宮内膜日付診では着床の窓はわからないこと、ERAテスト実施後の着床率は40%にすぎないこと、着床の窓がズレている方はそれほど多くないこと(当院のデータでは2.6%)をご理解ください。また、通常の時期の移植で一度でも妊娠された方は、着床の窓はズレていないとお考えください。

1 内膜日付診は主観的な要素が強く、1~2日程度のズレは診断する医師によってありますし、同じ医師でも違う日に見ると違う診断を下すという報告もあります。これでは、何の意味もありません。
2 ERAテストを追試した報告は、未だに発表されていません。これは、ERAテストの再現性に問題がある可能性を示唆します。ちょうどSTAP細胞のような状態です。
3 当院のデータは、体外受精で妊娠した方がどの時期で妊娠したかを後方視的に検討したものです。その結果、排卵日(ホルモン補充周期では切替日)から7日目に着床したと想定される方が97.4%であり、わずか2.6%の方で着床の窓がズレて妊娠していました。

それよりも、妊娠した時と同じ方法でトライすることをお勧めいたします。同じ方法でもうまくいかない場合には、慢性子宮内膜炎検査、不育症検査、銅亜鉛検査、子宮収縮検査をお勧めいたします。着床の窓をズラすのは極めて特別な場合です。多くの方はズラすと妊娠しなくなります。

下記の記事を参照してください。
2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」