Q&A1252 臨月で死産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 40歳、臨月で死産

38週の検診時に胎動が減っていると伝えたのですが、元気だと言われて帰され、3日後に受診した時には赤ちゃんの心臓が止まっていました。死産時に医師は不在、病理検査の説明もなし、検査もせずに(臍帯過捻転だろう)不育症ではないと言われました。
出産時の助産師さんに、臍帯も胎盤も見た目の異常が見られなかったと教えていただいたので納得できず、死産後、生理が来てから不育クリニックを受診、プロテインS欠乏の不育症と診断されました(日を空けて2回検査、プロテインS遊離抗原量が42%、45%でした)。次の妊娠時はバファリン+ヘパリンをすすめられました。また、別の不育専門の医師にもアスピリン+ヘパリンをすすめられました。

出産をきっかけに無痛性甲状腺炎にかかり、亢進症→低下症で現在もチラーヂンを服用しています。その後、初期の流産を経験し、一年かけてPGSにより正常胚を確保、これから初めての移植周期に入ります。

非妊娠時のプロテインS活性の値が気になり、最近生理でない時に検査を依頼したところ、31%と低値でした。実は父は40代で心筋梗塞で死にかけ(その後癌で死亡)、父方の祖父、祖父の弟は心筋梗塞で亡くなっています。遺伝性のプロテインS欠乏症のようです。これから移植して、妊娠できたとしても、血栓ができてまた流産、死産をするのではないかと不安でたまりません。

①ヘパリン+アスピリン以外に治療方法はありますか。
②先生でしたら、私の場合、アスピリンとヘパリンをいつまですすめられますか。
③子供の頃から血小板も、常に上限値より10程高いです。血小板も不育症とは関係ないでしょうか。
④非妊娠時にプロテインS活性が31%と低いので通常はヘパリン注射を1日2本のところを4本打った方が良いと思われますか。

A プロテインS欠乏症の場合には、赤ちゃんの突然の心拍停止がありえます。
①治療は、妊娠中に安心して使える薬剤に限定されますので、ヘパリン+アスピリンになります。
②このような場合には、出産までヘパリンを継続することをお勧め致します。アスピリンは、外国では出産まで使いますが、日本では薬剤の添付文書に出産の12週前までとのおかしな記載があるため、妊娠28週でやめることになります。
③血小板が上限値より10程度高いことは、不育症とは関係ないと考えます。
④ヘパリン注射は1日2本で良いと思いますが、妊娠中のプロテインS活性の数値によります。