☆慢性子宮内膜炎の治療戦略:前方視的検討 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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慢性子宮内膜炎(CE)について、チームリプロから最新の論文をご紹介いたします。

 

Am J Reprod Immunol 2017; 78: e12719(日本) DOI: 10.1111/aji.12719

要約:2011〜2014年に反復胚移植不成功(3回以上)の方421名を対象に、子宮内膜組織を採取し、CD138陽性細胞を染色することにより慢性子宮内膜炎(CE)の診断を行いました。CD138陽性細胞は、400倍で20視野以上を観察し、0.25個/視野(すなわち5個/20視野)以上を陽性としました。CEは142名(33.7%)に認められました。患者背景では、男性不妊と原因不明不妊がCE群で有意に多く、卵巣予備能低下が非CE群で有意に多く認められました。子宮内細菌では、コリネバクテリウムとマイコプラズマ・ホムニスがCE群で有意に多く、ラクトバシルスが非CE群で有意に多くなっていました。ファーストラインの治療(ドキシサイクリン)により92.3%のCEが治癒し、セカンドラインの治療(メトロニダゾール+シプロフロキサシン)により累計99.1%のCEが治癒しました。CE群のファーストライン治療後の出産率は32.8%であり、非CE群の初回出産率22.1%より有意に高くなりました。

 

解説:慢性子宮内膜炎(CE)はリプロ大阪の北宅院長のライフワークである着床障害の研究の一環であり、多数の英文論文を発表しています。CEは、反復胚移植不成功の方、原因不明不妊の方、反復流産の方に認められるとの報告があります。しかし、その治療の有用性については、小規模な後方視的検討しか報告されておらず、前方視的検討はありませんでした、本論文は、反復胚移植不成功のおよそ1/3にCEが存在し、ファーストラインの治療により90%以上のCEが治癒し、1/3の方が出産に至ることを前方視的に示しています。

 

下記の記事を参照してください。

2016.5.27「慢性子宮内膜炎と全身の炎症は無関係

2016.4.17「☆正常胚が着床しないのは何故? その2

2016.1.22「慢性子宮内膜炎と反復流産の関係

2015.10.18「慢性子宮内膜炎と反復流産の関係」
2015.5.21「☆慢性子宮内膜炎と異常子宮収縮の関連」
2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」