Q&A1782 思い通りの治療ができません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2017.11.9「Q&A1636 初めての採卵結果に意気消沈」の続き

メッセージした直後(結果)、状況整理ができたので、自分の考えを主治医に伝えました。夫が同席していたためか、面倒になったのか、話を受け止めてもらえず、好きにすればいいといった態度だったため、(指定制)担当医を変更しました。
1)2回目の採卵をしましたが、(お返事をいただく前で、クロミッド服用には不安があり)アンタゴニスト+hMG+FSHの「FSH」刺激薬剤を処方してもらうだけでも一苦労で、刺激薬剤の選択では(好)変化はない。他院はやっているが、管理が面倒との回答。さも私の我儘、屁理屈で駄々こねっ子といった感じになりましたが、新主治医に懇願し、医院長との面談後、始め3日間はフォリルモンP、4日目以降はフェリングを処方してもらい、自己調剤できる範囲でhMG+FSHを注射し、CD7のE2が1260、左右合わせて7個の卵胞が確認できました。が、CD10での採卵結果5個、正常受精2個(G4ab,G5)、多精子、変性、未受精となりました。同時にOHSSも現れ(吐き気、胸部の痛み、腹部の腫れ・腹水、卵巣の腫れ左右ともに6~7cm、Hb13.4→9.6に低下、3週間後に13に回復。腹部の腫れによるヘルニアの出現=ヌック管水腫?→現在消失)、結果的に新鮮胚移植はできませんでした。
2)1)の後、G4abとG5を3日目に冷凍し、自然周期(内膜はやはり薄めで8.1㎜、6.7㎜)で9cellG4abと2cellG5(一部変性)の凍結融解胚を2個移植しましたが陰性でした。貯蔵も考えましたが、助成金の年齢制限もあり、今回は移植しました。2回目の方針を決める時、新主治医に未熟卵は培養しないのか聞いたところ、しない。培養液が異なるので、採卵する?が活用しないとのこと。その話を聞き、たかが1回目採卵移植の陰性でしたが、転院しようか真剣に悩み結果、新主治医は素人の私の拙い表現でも十分話を聞いてくれること。妊娠してもらおうという熱意が伝わってくること。(その医院では)できないこと、できることをちゃんと説明してくれるので、前主治医とは雲泥の差でストレスフリーで、通院もニュートラルな気持ちでいられます。ただ治療院は年配のベテラン医師が多く、松林先生のおっしゃるとおり古典的で保守的であり、今後の治療について悩むところです。
3)DHEAS、テストステロンの検査採血だけではなく、D3(CD1)のFSH/LH採血もありません。
懇願しましたが、採血してもらえませんでした。ビタミンDは、メッセージ送付した直後に、市販サプリの服用を開始しました。DHEASは、松林先生がブログでおっしゃっていたとおり移植周期、判定待ちまでは服用していません。ただご指摘のとおり正確な数値があっての処方なので、服用を考えたいと思います。
4)採卵前のピルに関しては、後日ブログに卵巣機能低下との記事を発見し、次回は服用しないと心に決めていたのですが、2回目の採卵前周期にプレマリン&プラバノールのカウフマン療法をしてしまいました。以前、UAEの後遺症にはカウフマン療法が有効と聞いたので、これ幸いと思いましたが、治療初心者は薬剤の説明を聞いても、これが何を意味するのか?他の作用は何か?が分からず、気づいた時にはプレマリンを飲み終えるかどうかの時期だったため、無断で服用中止するわけもいかず、2回目採卵もピルを用いてしまい、反省です。
5)2回目移植からワンクリノンから従来のルティナル膣錠に変更になりました。治療院での流産率が上昇したためだそうです。ワンクリノンの膣部の圧迫は不快感極まりなかったです。貴院が3種類の黄体ホルモン製剤を同時に用いていることに納得です。

退職し妊活に専念する予定ですので、リプロを受診できればと思っております。ご丁寧にご教示いただき、ありがとうございました。
 
A 個別対応であるテーラーメード医療をするには手間がかかります。このため、多くのクリニックでは、いくつかのパターンのみの医療をしています(通常2〜3パターン)。これに合った方は良いのですが、合わない方はなかなか妊娠に至りません。しかし、パターン以外の診療はできませんから、質問者さんのような状況に陥ります。このような場合には、我を通すか転院するしかありませんが、大抵の場合は後者になります。
 
さて、何故テーラーメード医療が出来ないのでしょうか?様々なパターンへ対応するためには、薬剤や機材の種類が増えることによるデッドストック増加や、間違い防止のためのマンパワー増加と各種安全対策が各部署ともに必要になるなど、割高になります(つまり全ての費用が高額になります)。単一法で実施すれば、このような部分のコストカットができますので、安くなりますが、全ての方への対応はできません。目的は妊娠出産ですから、ひとつのクリニックの方法で成果が出なければ、多様性のあるクリニックへの転院をお勧めいたします。
 
なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。